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書店のイベント企画を成功させるために!本屋のマーケティング手法を解説

水谷 壽芳 (みずたに・ひさよし)様
HRDグループ・プロファイルズ株式会社 ディレクターパフォーマンスコンサルタント
HRテクノロジー活用による経営改善のコンサルティングを企業に提供。日本国内における新たな人材アセスメント・ツールの普及を志向して、70社を超える戦略的ビジネスパートナーとの新規事業の立ち上げに従事デジタルHRの領域においては、国内の第一人者として日系から外資系にいたるまでさまざまなプロジェクト導入・セミナー講演・寄稿を含め、国内でも有数の実績を誇る。
2022年1月18日(火)に、代官山蔦屋書店のトークイベントにて登壇した水谷様。代官山蔦屋書店と水谷様の架け橋として、イベントコーディネートをサポートした当社営業担当の鈴木とともに、今回のイベントの背景や今後の展望についてお伺いしました!
書店イベントという新しいマーケティング施策
ーまずはお仕事内容についてお聞かせください。
HRDグループ・プロファイルズ株式会社にてパフォーマンスコンサルタントとして人材データを活用した組織人事のコンサルティングに従事しています。
組織人事というと通常、人事部の方を想起されると思いますが、経営者、組織のトップや組織運営に携わる方への支援も行っています。そして、クライアント企業や当社パートナー企業の組織に関する悩みや課題を、グローバルで定評のある人材アセスメントツールを活用して、組織力強化解決へのお手伝いをさせていただいております。
ー今回「書店イベント」をすることになったきっかけはなんですか?

水谷:クロスメディア・マーケティングの鈴木さんから、今回書店イベントのご提案をいただきました。ですが、最初は書店でイベントをすることは想像もしていなかったので、「新しい提案をいただいたな」というのが率直な感想でしたね。
鈴木:実際に、「書店イベント」には可能性や面白さは間違いなくあると、個人的にずっと思っていました。ただ、水谷様のように一緒にスタートしてくださる方がいなければ、実現は難しかったです。今回の「書店イベント」のご提案に特に過去の実績があるわけではないにもかかわらず、私たちのご提案に興味を持ってくださった水谷様には本当に感謝しています。
今回のような、「書店イベント」のサービスはまだまだ完成形ではなく、今後もっと大きくなっていくものだと感じています。そうなったときに、今回の水谷様とのイベントが「あの代官山蔦屋書店の書店イベントが大きな第一歩だったな」と語ることができるものになったなと思います。
水谷:そうですね。私は今の会社でマーケティングやセールスをディレクションしている面もあり、人事系のメディアの方とはよくやり取りをするのですが、相談した際にいただく提案は大体アウトプットまでが想像できるような、あまり斬新さがないものでした。
ですが、今回鈴木さんからは、代官山蔦屋書店の書店イベントのご提案などを中心に、今までいただいていたアウトプットとは違うものばかりで、そこにまず面白さを感じました。
「書店イベント」では、純粋に自分の「いいな」と思うコンテンツを情報発信したいという想いのもと、普段からお仕事でご一緒させてもらっている小杉さん(小杉 俊哉/著作『起業家のように企業で働く』クロスメディア・パブリッシング)などがお持ちである、素晴らしい知識・ノウハウを発信し、それが結果的に自社のブランディングやマーケティングに繋がればいいと感じていました。
良質なコンテンツを届けることが、発信者として重要なこと
「書店イベント」では、純粋に自分の「いいな」と思うコンテンツを情報発信したいという想いのもと、普段からお仕事でご一緒させてもらっている小杉さん(小杉 俊哉/著作『起業家のように企業で働く』クロスメディア・パブリッシング)などがお持ちである、素晴らしい知識・ノウハウを発信し、それが結果的に自社のブランディングやマーケティングに繋がればいいと感じていました。いいコンテンツを発信する場所として、代官山の蔦屋書店はかなりいいロケーションですしね。

書店にある、新しい価値とマーケティング施策としての可能性
ー今回の「蔦屋代官山のイベント」を通じて新たな発見や可能性はありましたか?
水谷:はい。マーケティングの視点から考えて大きく2つの発見がありました。ひとつは、書店での「新刊」以外の打ち出しの可能性です。実際に、書店にお伺いして感じたのが「新刊の打ち出しが強いな」という印象でした。
今回、クロスメディア・マーケティングさんを通じて実施した「書店イベント」も新刊ではなく既刊のイベントであったように、新しい書籍以外にも、価値の高いコンテンツを持つ書籍はたくさんあります。そういったポイントも、書店でマーケティング施策をやる可能性として大いにあると感じました。受け取り側にとって「いいコンテンツ」を発信することが重要で、そこでは新刊や既刊のフィルターはあまり大事ではないと思うんですよね。
もうひとつは、書店さんには例えば、書籍の陳列の仕組みや売れる配置など、書店さんしかもっていない独自のマーケティングノウハウがあると思うんですよ。そのような点を、例えばWEBのレイアウトに活かすなど、その業界では当たり前の知識でも他者から見ると斬新なアイディアになりえるものを、クロスさせることで、新しい価値が生まれるのではないでしょうか。
また、今回は代官山という魅力的な場所での開催だったので、「代官山に行く」という行為自体に良さを感じてくださった参加者の方も数名いらっしゃいました。なので、今後は地域などのセグメント別にSNS広告などを運用して、戦略的な集客も可能ではないかと思います。
ー「書店イベント」の提案を受けるまでに「書店のイベント」について考えたことはありましたか?
水谷:あんまりなかったですね。書店そのものに着目することがなかったので。なので、クロスメディアさんからは、今回新しい企画をご提案していただけてよかったです。
ー実際に「代官山蔦屋書店イベント」を終えていかがでしたか?
水谷:著者の方に読者の方々が、しっかり質問できる場というのはやはり重要だと感じました。本という紙の媒体に書かれていることは読者の頭の中で概念化はされるんですけど、著者本人から聞くことで、書籍に書かれていない背景の部分が知れることは、コンテンツとして貴重だろうなと思って企画しました。結果、その通りにオンライン・イベント後に小杉さんと参加者の会話が生まれて、盛り上がっていました。コロナ環境ですので、このような対面によるコミュニケーションはやはり重要性を増しますね。
あとは、今回のイベントをきっかけに、複数のメディアの露出に繋がったことも良かったと思います。

※書籍『起業家のように企業で働く』トークイベント「新しい時代の働き方を知り、キャリアをアップデートする」のイベントの様子
※トークイベントの内容はログミー記事でご覧いただけます。
今後のマーケティングは、マス広告よりも個人レベルでの施策が求められる
ー今回の書店イベントを通じて感じたマーケティングの未来の可能性についてお聞かせください。

水谷:そうですね。マーケティングの可能性として、受け取り側の心理特性に合わせて、発信するメッセージを切り分ける手法が、今後注目されていくと確信しています。
今までは、ラジオやテレビで一斉に広告を打ち出していましたが、現代ではデジタル技術の普及により、サイト上の購買履歴などの行動やSNSで検索しているコンテンツなど、ユーザー情報がより明確に分析できるようになりました。
例えば、ネットショッピングサイトで表示されるおすすめ商品は、ユーザーのネット行動履歴から分析され、表示されています。これに加えて今後は、ユーザーの心理特性に合わせて、より受け手にとって受け取り易い表現やメッセージになっていくことと、思います。発信側はどんな言葉により反応するかなどを分析し、ユーザーへのメッセージを出し分けてアプローチする手法が注目され始めています。

ユーザーの心理特性を分析して効率的なマーケティングアプローチを
水谷:人は新しい情報や新しい環境に触れたとき、その人の心理特性によって受け取り方が異なると言われています。そのため、その人に合ったカスタマイズされたマーケティングアプローチがより重要になります。
近年はコロナ禍によって、リモートワークが急速に浸透しましたが、この下の図のように、リモートワークを心地よく感じる人とストレスを感じている人がいることがわかりました。そして、それらの分かれ道がその人の「社交性」にあったんです。
もともと人とのコミュニケーションが好きな社交的な人は、リモートワークで人とコミュニケーションがとれないので、かなりストレスに感じており、反対に、元々あまり社交的ではない人は、リモートワークという新しい環境を心地よく感じていることが、調査の結果わかりました。この調査では、当社が提供する、ProfileXTという人材アセスメントから得られたデータが活用されました。

今回のような書店イベントにこの手法を当てはめると、論理的に物事を理解したい読者に対しては、案内のメッセージを変えたり、書店セミナーも数字や分析が多めのコンテンツを企画します。それに対して、物事を直観的に判断したい読者には、書店セミナーや案内ページにも感情や感覚に訴えるようなメッセージを表示するようにします。こうした、個別化したマーケティングを活用していけば、書店イベントの集客などもより戦略的かつ効果的に可能になります。WEB上に、個別で最適化されたユーザー体験を届けるプラットフォームなどの技術もプルーブンなソリューションとして、提供されています。データ活用の専門企業のブレインパッド社のRtoaster(アールトースター)などが有名ですね。
マーケティングの未来として、この心理特性データを活用した個別化マーケティングは、今後注目される流れになっていくと思います。
メディアをクロスさせ、価値を創造する重要性

水谷:また、マーケティングにおいて「クロスメディア」の可能性も非常に重要になってくると感じています。
例として、デジタル×アナログのアプローチがあったときに、どのようにハイブリッド化させて、どのように価値を最大化させるのかが、今後のポイントにもなってきます。クロスメディア・マーケティングさんがその架け橋となるコンサルタント的な立ち位置になれば、サービスの質はもっと向上し、今回のような書店イベントでも、より価値を見出すことが可能だと思います。

書店イベントにおけるファシリテーターの重要性

水谷:また、書籍×書店というマーケティング施策を実施して、感じたことは、著者とファシリテーターと読者という3つの要素のバランスの重要性です。この3つの要素の中でも、重要な役目がファシリテーターです。ファシリテーターは、著者の持っているコンテンツを引き出し、著者の考えを読者層レベルに分解し、読者の方にわかりやすく伝える役割を担っています。ファシリテーターの存在により、著者と読者のイベントの満足度・評価は大きく変わるでしょう。
今回の「代官山蔦屋の書店イベント」でも『サイバー攻撃への抗体獲得法 〜レジリエンスとDevSecOpsによるDX時代のサバイバルガイド』(韮原祐介/サイゾー)の著者である韮原にも同じことがいえます。著者であるそのコンテンツの「本物」の発言は、ファシリテーターを通じて解説する人がいないと、解釈が難しく、イベントに参加した読者が置いていかれてしまう可能性があるんですね。ですので、著者の魅力を最大限発揮させることができるような、ファシリテーター的なポジションを今後クロスメディア・マーケティングさんが担うことができれば、著者側も読者側も双方が満足できる価値あるサービスになると感じました。
書店の未来の在り方を考える
ー今後の書店や書籍の在り方についてどうお考えですか?
書籍は何年経ってもずっと残っていくビジネスだと思うんですよね。未来では、地域に沿った書店というものが普及していく流れになると感じています。
厚労省が出している「平成の30年間と、2040年にかけての社会の変容」(令和2年版 厚生労働白書)にて、2040年の働く環境を調査した際に、「人との繋がりや支え合い、日々のちょっとした手助けをする機能や地域づくり」が求められるであろうというデータがでているんです。そういった人や地域に寄り添ったコミュニティ作りが、今後の書店には求められてくるのではないかと思います。
この例として、明石市と書店のコラボ企画があります。明石市は全国で初めて、「パートナーシップ・ファミリー制度」を認定し、セクシャルマイノリティのカップルに対して婚姻相当の関係と親子関係を自治体として認めるなど、LGBTQ+に関して理解がかなり進んでいる地域です。そんな明石市と市内の書店により、LGBTQ+に関するパネル展や関連書籍の設置などのコラボ企画が実施されました。
このような、それぞれの地域コミュニティの状況や特性に応じた書店の在り方が、これからは必要になってくるでしょう。この様な流れにも、今後注目していきたいと思います。
ー本日は貴重なお時間ありがとうございました。
