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ブランディングデザインとは?企業ブランディングにデザインが必要な理由について
企業がブランディングを行っていくなかで欠かせないのが「デザイン」の存在です。ブランディングの先進国である欧米では経営とデザインは切っても切り離せないものであるという考えが根付いています。しかし、日本企業はデザインの存在を後回しにしがちな傾向にあります。近年、徐々に目が向けられるようになりましたが、ブランディングにおいてデザインの重要性というのはあまり多く語られてきませんでした。
本記事ではブランディングに欠かせないデザインの重要性から制作手順や成功事例まで、詳しくお伝えします。
ブランディングやデザインに興味のある、またはブランディングに取り組む際、何に力を入れるべきか悩んでいるマーケティング担当の方にご一読頂きたい記事です。
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『視覚的効果とは?ビジュアルマーケティングの新しい戦略』
ブランディングデザインとは
ブランディングデザインとは、ブランディングを行う上で自社のブランドコンセプトやメッセージを、顧客や消費者に視覚的に訴えるデザイン面全てを指す概念です。視覚情報は年齢や言語にとらわれることなく、多くの情報を伝えることが可能です。
主に、ブランドのロゴや広告、パッケージ、Webサイト、店舗デザインなど、あらゆる視覚情報は、消費者と接点となるタッチポイントとなるため、ブランディングを行う上で欠かすことはできません。
ブランディングデザインを行うことで、自社のブランドに対する周知を広げていく事ができ、最終的には「このデザイン・ロゴは○○社だから安心」などという信頼感を獲得することができます。
しかし、ブランディングデザインは、単にロゴをデザインしたり広告を制作するだけには留まりません。デザインを用いてのブランド構築のためにはリサーチやコンセプト立案と概念化・統一した世界観(トーン&マナー)の設定などと多岐にわたります。
ブランディングデザインはブランドの根幹を築く重要な施策となります。
企業ブランディングにデザインが必要な理由
視覚情報の重要性
人が視覚からどれほど情報を得ているかご存じでしょうか?人間は視覚、聴覚、味覚など五感から多くの情報を受け取っています。その中でも視覚情報は、人間が受け取る情報の90.9%を占めているとされています。
また、人が耳で聞いた内容を3日後に記憶している割合は10%、そして同じ内容をイラストとして見せた場合が35%を記憶しているという実験結果があります。このように視覚的情報は情報量や記憶定着の観点からも重要であることがわかります。そのため、ブランドを伝える手段として、デザインに注力することは当然と言えます。
どんな企業の商品やサービスでも、顧客とのタッチポイントで最初に目にするのはデザインです。デザインはそのブランドの雰囲気やイメージを想起させ、受注や購買に結びつける役割を持ちます。
顧客はブランドに関わる全ての要素が醸し出す雰囲気から判断して購買を決めています。顧客に手に取ってもらうには、商品自体の良さだけではなく、どれだけその商品の世界観を商品以外の要素全てで表現できたか、にかかっています。
企業がいかに素晴らしいコンセプトやビジョンをもっていても、デザインでの表現を怠り、好感を持たれなければ、自社の魅力は伝わらず、機会損失に繋がってしまいます。一方で、素晴らしいビジョンをわかりやすくデザインで表現できていた場合、それは顧客からの安心と信頼に繋がります。
そのため、ブランディングの実現には優れたデザインは欠かせないものであり、ブランディングデザインは重要です。
ブランディングとデザインの関係性について詳しい記事はこちら↓
『デザインがビジネスにおいて重要な理由』
企業を体現するデザイン
デザインは自社を体現するものです。そのため、全てのタッチポイントで顧客が感じる雰囲気が、そのブランドの世界観を矛盾なく表現していなければなりません。
部分的に違った印象を与えてしまうと、バラバラと異なるメッセージを発信しているということになり、ちぐはぐで混乱を呼び、不誠実で信頼のおけない印象になってしまう可能性があります。
また、見た目が良い物だけがデザインではありません。ただおしゃれなだけのデザインのものを作っても、「自社のブランドらしさ」が損なわれてしまっては、周知させたいブランドイメージを正しく伝える事ができません。
ブランディングデザインは、時代や環境を考えながら、戦略的に企業のもつ「らしさ(価値)」を引き出します。そして、顧客とのタッチポイント全てにおいて「らしさ」を正しく演出し、最も効果的に伝わる形に落とし込むことが成功に繋がります。
ブランディングデザイン制作手順
ブランドコンセプトの明確化
自社が目指すべきブランドのコンセプトを明確にしてくために、どのようなターゲットにどんなメリットが提供できるのかを考えていきます。
まずは、目指すビジョンや強み、課題、目的、歴史、市場などの現状分析を行い、自社ブランドの魅力となる本質を引き出していきます。
そして引き出された本質の概念化を行っていき、コンセプトを明確にしていきます。消費者だけでなく、ブランドに関わる全ての人が混乱することなく理解し、誰もが迷わず同じ方向を目指せるように、正確で明確にシンプルにブランドコンセプトを定義する必要があります。
また、コンセプトを制定する際は、ブランドを表すキーワードの選定も行うと良いとされています。
例として、愛媛県今治市のタオルブランドである今治タオルは、「安心・安全・高品質」というキーワードでブランディングが進められました。このように初期段階で言語化することで、社内全体でのブランドイメージの共有が図れます。
ビジュアルアイデンティティの構築
ブランドの本質を、概念からコンセプトが明確に定義できてもそれが体現できなければ、ブランドとして機能しません。
コンセプトの設定ができたら、消費者や社会に魅力的に伝わるよう、ビジュアル・アイデンティティを構築していきます。
ビジュアル・アイデンティティ(VI:Visual Identity)とはこれから作り上げていく制作物の基礎となるビジュアルのルールです。言語化されたビジョンやブランドのアイデンティティを最適なデザインに落とし込み、ロゴや商品、webやパンフレットなど広告物から、店舗やオフィス、制服など、統一した世界観でメッセージを展開していくことを指し、全てのビジュアルがこのビジュアル・アイデンティティにしたがって作られていきます。
ブランドDNAで作り上げたものを視覚的に伝え、ターゲットにとって魅力的に表現するのがポイントです。
タッチポイントの把握
コンセプトやビジュアル・アイデンティティが明確になったら、ブランディングを行うべき、消費者との「タッチポイント」を把握します。
自社のHPやチラシなどの広告媒体、店舗やオフィス、パッケージなど、顧客とのタッチポイントは数多く存在します。そのすべてに適切なブランディングデザインを考えなくてはなりません。
大切なのは「これはあのブランドだ」と認知してもらえる統一感を保ちながら、ブランドの魅力を十分に伝え、触れる人々がファンになってしまうような魅力的なものを制作していくことです。
デザイン制作
最後は、実際にデザインを制作の段階に移ります。自社のコンセプトに適したイメージでブランドの世界観を形にしていきます。
その際に重要なのは、必ずデザインはビジュアル・アイデンティティに沿っている必要があり、すべてのデザインをブランドの世界観で統一することです。
例えば、広告では高級感を売り出していたのに、安っぽいパッケージや商品デザインでは、購買意欲が損なわれてしまいます。
ブランディングデザイン成功事例
レッドブル
コンビニやスーパーでは目にするのが当たり前になった「レッドブル」は、1978年にオーストリアで生まれた清涼飲料水のメーカーです。
エナジードリンクという商品の特徴をただそのまま宣伝するのではなく、TVCMでは「レッドブル、翼を授ける」という有名なキャッチコピーを打ち出すことで、独特の世界観を作り上げることに成功しました。
また、 TVCMだけでなく、スポーツや音楽、ゲームなどのイベントの協賛や自主開催で、ターゲットである多くの若者とのタッチポイントを創出しています。
スターバックス
スターバックスといえば、特徴的な人魚のイラストのロゴですが、経営の方針が変動するタイミングで変更が加えられています。直近では2011年に変更があり、ロゴから「STARBUCKS COFFEE」の文字が消えました。これは、コーヒー業界のみならず他の事業にも乗り出すというブランド戦略の表れといえます。実際に、ニューヨークにお茶の専門店をオープンするなど事業の多角化に成功しました。
また、スターバックスはブランドコンセプトとして「サードプレイス(第三の場所)」を提供することを掲げています。スターバックスが親しまれる理由には、コンセプトに忠実にこだわりぬかれた、空間デザインがあります。
スターバックスは1店舗1店舗、地域に合わせた店舗デザインが為されており、それには社内に在籍する、デザイナーや建築士のスペシャリストの存在が欠かせません。
ブランディングデザインはどのように取り組むべきか
本記事ではブランディングデザインについて詳しくお話してきましたが、ブランディングデザインは、どのように取り組んでいくべきでしょうか。
デザインに造詣が深い経営者や企業に専属のデザイナーがいない場合、自社のみでブランディングデザインを考えていくのは難しいでしょう。その場合、新たに優秀なデザイナーを雇うか、外部へ発注することが勧められます。
しかし、上記で述べたように、ブランディングデザインには統一した世界観の創出は必須です。WebサイトはA社、パッケージはB社、ロゴマークはC社という風に、その都度で様々な企業に外注していると、築いてきたメージの喪失に繋がりかねません。ブランド価値を高めるには、ロゴマークから名刺やWebサイト、店舗やオフィスデザイン、写真1枚まで一貫性のあるブランディングデザインの戦略の下、全体を通したディレクションが必要となります。デザイナーと経営者が二人三脚で取り組むことが成功への近道と言えます。
(参考文献:小山田育、渡邊デルーカ瞳 著『ニューヨークのアートディレクターかいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと 世界に通用するデザイン経営戦略』 )