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クロスメディアとメディアミックスの違いとは?顧客シナリオとの関係性を解説

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クロスメディアとメディアミックス。この2つの手法は、一見似ているようで実は大きな違いがあります。
その鍵を握るのが『顧客シナリオ』という概念です。複数のメディアを活用するという点では同じでも、その根本的な発想と戦略には明確な違いがあります。

今回は、この2つの手法の本質的な違いと、特にクロスメディアの持つ現代的な価値について、具体例を交えながら詳しく解説していきます。

クロスメディアとメディアミックスの違いとは

以下の図はある新商品発売のマーケティングですが、これはクロスメディアでしょうか?

(図1)

(図2)それぞれのメディアの強みと狙う効果

実は、これは『クロスメディア』ではなく、『メディアミックス』なのです。

メディアミックスは、複数のメディアを組み合わせて使うマーケティング戦略です。

テレビ広告、新聞広告、PR等のマスメディア、ウェブサイトやウェブ広告、SNS等のウェブメディア、カタログ・パンフレット、街頭・店頭イベント・電車の中吊り、プレゼントキャンペーン等販促施策・・・・・メディアそれぞれの強み弱みを考慮しながら選択します。

これらを特定期間内に同時多発的に使うことで、単体で使う時と比べより広い層に認知・理解・購入意向喚起を行う施策、それがメディアミックスなのです。

一方クロスメディアは、メディアミックスの要素を含みつつ、さらに一歩進んだ戦略です。最大の特徴は「顧客シナリオ」を中心に据えること。

以下に、比較としてクロスメディアの例を挙げます。

こちらの図は、ターゲットである顧客のペルソナを作り出し、「顧客が商品を購入する」という企業側の目標を達成するまでの流れをシナリオとして表したものです。

(図3)

クロスメディアも複数のメディアを使うのですが、クロスメディアであるためには、単にメディアを組み合わせるだけでなく、ある視点を持って計画立案しなければならないのです。

それは顧客シナリオという視点です。

つまり、「クロスメディア=顧客シナリオ×メディアミックス」なのです。

メディアだけでなくコンテンツもミックスするため、正確には「顧客シナリオ×メディアミックス×コンテンツミックス」と言った方が妥当といえます。

顧客シナリオとは

顧客シナリオとは、企業側の視線でなく、顧客側の視線で自社の商品・サービスとの出会いから接触・体験を描くことです。

顧客のニーズの芽生えから、自社商品との出会い、理解深化を通して購入意向が芽生え、購入に至る。更には購入による体験の満足から、リピート、そしてロイヤル顧客へと至る道筋を描くことです。

顧客の道筋と言っても、顧客に指示命令する訳には行きませんから、あくまで「この道筋を辿ってくれたら嬉しいな」という企画者の願望を描きます。

何もしないで顧客が願望通りに行動する可能性は低いので、願望通りに顧客が行動するための仕掛けを考え誘導を図ります。

「顧客シナリオ=願望としての『(変化の)道筋』×願望を実現する『仕掛け』」と言えるでしょう。

顧客シナリオの作り方

では、実際に顧客シナリオの作り方を考えてみましょう。

今回はキャンプ、それもグランピングを売り物にしているレジャー施設POCO(仮称)を例に取ります。

①目的とターゲットのペルソナを明確にする

まずは、レジャー施設POCOの「目的とターゲット」を明確にします。

〈目的〉「今年の夏休み、どうしようかな」と計画し始めたパパに対して、グランピングの予約をしてもらう

〈ターゲットのペルソナ情報〉

斉藤昭雄さん39歳

立っている家族のイラスト

中堅メーカー課長、都内町田市在住。
妻と小学生の子供二人の4人家族。
アウトドアなら何でも好き。

②ターゲットに寄り添ってシナリオの流れを考える

この場合、顧客がたどるシナリオは

「夏休みの計画を考え始める」⇒「情報収集」⇒「候補の比較・検討」⇒「本命候補の詳細検討」⇒「決定・予約」

といった流れで進むことが考えられます。

しかし、これだけでは大雑把かつ概念的であり、まだ打ち手となる施策を考えることは困難です。そこで、ターゲットである斉藤さんの「気持ち」にもう少し寄り添って考えてみましょう。

③ターゲットの行動を読み、誘導するための施策を考える

②では、斉藤さん(ターゲット)の気持ちに寄り添って、細かい段階を想像してシナリオを構築しました。

しかし、あくまでもこれは、「このように気持ちが変化してくれたら嬉しいな」という企業側の願望を描いたものです。このままではシナリオ通りに顧客が進んでいくとは考えにくいといえます。

そこで、何らかの打ち手を打つ必要があります。斉藤さんの「行動」を読んでみましょう。

ターゲットである斉藤さんにこちらの期待どおりの行動をしてもらうためには、以下の施策、
すなわち仕掛けを準備しておく必要があります。

テレビパブリシティー⇨グランピングの楽しさをテレビ局に取り上げてもらうためのPR施策
SEO/リスティング⇨「グランピング」で検索したときに上位に表示されるようSEO対策を行い、さらにリスティングで集客
YouTube動画投稿⇨POCOの施設の魅力を動画で撮影・編集しYouTubeへアップ
公式サイトのCVアップ策⇨公式サイトのコンテンツ充実に加え、予約までの導線設計(EFO含む)をしっかり行う

④長期的なシナリオを考える

ここで重要なのは、顧客シナリオは「予約して終了」ではないということ。



顧客が実際に現地で楽しみ、その楽しさを皆と共有して、リピートしてもらうまでの道筋を考えなくてはなりません。短期的なゴールは「顧客が夏休みにPOCOの施設利用を予約すること」ですが、長期的には「顧客がリピーターになり、ファン化すること」がゴールなのです。



これには、顧客である斉藤さんが施設の魅力を周りに共有することで、新たなお客様を呼び寄せる効果も期待できます。

そのためには、③の施策だけでなく、以下の仕掛けも加えて準備しておく必要があります。

リアルイベント⇨当日の滞在を盛り上げる様々なイベントや期間限定キャンペーン
インスタ投稿促進⇨インスタ映えするスポットやメニュー、ユニークな体験を準備し事前に紹介
POCOファンクラブ運営⇨ファンが自らの体験を共有して盛り上げるコミュニティの運営(基本的にはWeb上で行いますが、オフラインイベントもあると良いでしょう)
顧客満足体験のコンテンツ化⇨以上の施策の結果で得られた顧客の満足の体験をコンテンツ化して各施策に反映

顧客シナリオ作成のまとめ

今まで述べたことを「顧客シナリオ=顧客に進んでほしい『道筋』 × その道を進むための『仕掛け』」
として、改めてまとめてみましょう。

改めて、顧客シナリオとは?

御覧いただいたように、顧客にこのように変化して欲しいという願望としての姿が数珠つなぎになってスタート地点からゴール地点まで描かれます。更にその願望を実現するための仕掛けがその変化毎に計画されます。

企業として期待するのは「買う」「契約する」「リピートする」といった最終行動ですが、店頭で衝動買いするといった場合を除くと、いきなりその最終行動を人は起こしません。行動・心理の様々な変化の結果、最終行動に至るのです。

顧客の気持ちになって「自分だったらどうするかな」「ウチのお客だったらきっとこうするだろな」と考えます。

この時重要なのは「行動」という分かりやすい要素だけでなく、「心理」まで踏み込んで描かれることです。

なぜ行動だけでなく、心理の変化も考えるのか?

「行動」というのは、「心理」と比べてより客観的事実かつ明快です。その行動を「した/しなかった」で判別できるため、非常に分かりやすいものなのです。

それに対して「心理」というのは曖昧です。主観的・情緒的側面も多く、何が正しいのか正しくないのか判断が難しいため、一歩間違えれば「言葉遊び」なのではないかとすら思えます。

しかし、良く考えてみて下さい。

例えば、皆さんがこれまでしたことのなかった行動をした場合、自身の中で何が起こっているのでしょうか?

脊椎反射・条件反射なら別ですが、新しい行動は、頭の中で心理に変化が起きたから引き起こされたのです。

例えば、知ってはいたけれども今まで購入までには至らなかった商品を、あるタイミングで購入することに決めたのは、

 「実はその商品に、自分が興味のある〇〇な効果があると知ったから」

 「街で持っている人を見かけると、私にも向いている商品なのではという気がしてきた」

または、特売で安くなっているのを見て

 「今までは品質の割に高いと思っていたけど、この値段ならむしろコスパが良いな」

というような、何かのきっかけで心理の変化が起こり、それが購入という結果に繋がることがあります。

すなわち新しい行動は心理の変化、より正確には認識(パーセプション)の変化によって生まれたのです。「行動の源泉は心理の変化」とも「行動は結果に過ぎず、心理まで遡らなければ本質は見えない」とも言われるのは、こうした理由によるものです。

顧客の「心理」について考えることは、最初は難しく感じるかもしれません。しかし、顧客の気持ちを常に考えることが習慣化すれば、むしろ行動よりも道筋を描きやすくなります。

マーケティングで一番大事なことは「企業の目線でなく、顧客の目線で考える」だと言われますが、これを実践していれば、「行動」よりも「心理」の変化の方がリアルにイメージしやすいのです。

顧客にシナリオ通りに進んでもらうために必要な「仕掛け」

顧客の心理・行動の変化を想像するだけでは、顧客に企業の思惑通りに動いてもらうことはできません。そこで、「仕掛け」という企みが必要になっていきます。

この「仕掛け」とは、顧客に狙った行動をしてもらうための施策を指します。

前述したアウトドア施設POCOの例では、テレビ番組パブリシティー、SEOやリスティング、YouTube動画投稿、公式サイトでの予約促進施策、来場時のリアル体験イベント、インスタ投稿促進、ファンクラブ(コミュニティー)運営などの施策を仕掛けとして記載しました。

このような施策はまさにメディアミックスです。

単なるメディアミックスと違うのは、「顧客の心理・行動がこう変化して欲しいというシナリオ」に沿ってそれぞれの変化に合わせた施策が組まれていることです。

メディアミックスと顧客シナリオが掛け合わさった、この戦略こそが「クロスメディア」なのです。

メディアミックスとクロスメディアの基本スタンス

クロスメディアとメディアミックスの両者の違いはご理解いただけたでしょうか。

より根本的な違いは、両者のプランを作成する際の企業、計画作成者のスタンス(姿勢)です。

メディアミックス:企業が様々な手段(メディアなど)を使って顧客をどう攻略しようかと作戦を練る姿勢
クロスメディア:顧客の心理・行動の変化に寄り添い、それを後押しする姿勢

クロスメディアとCX(顧客体験)

昨今、CX(CustomerExperience/顧客体験)という言葉を目にすることが多くなりました。今まで述べた顧客シナリオは、まさにCXであり、CXシナリオと言い換えても良いでしょう。

では、「クロスメディア=CX」なのでしょうか?両者の違いについて考えてみましょう。

クロスメディアとCXは、向かっている方向性は同じですが、その実体は異なります。

昨今語られるCXは、マーケティングの領域を大きく超えています。新事業開発、新会社設立といった領域を想定した計画になることが多いのです。
それに対してクロスメディアは、あくまでマーケティングの領域にとどまります。

企業が現在持っているリソースを活用して「購買」「契約獲得」「リピーター育成」「ロイヤル顧客の獲得」といった目標を達成するための手法です。

働きかける領域は異なりますが、どちらも「企業視点」ではなく「顧客視点」で立案する点は共通しています。

なぜ顧客視点が重要になってきたのか?

その理由は、「顧客視点」で立案しないと、成果が出ない時代になってきたからです。

かつては企業がマスメディアや販売店店頭、営業マンの説明を使って情報をコントロールし、顧客はその情報に頼るしかありませんでした。しかし今では、インターネットを通じて顧客は自分で多くの情報を手に入れ、他の客の投稿等から商品の実際の使用感なども確認できます。企業からの自身に有利な情報に頼ることなく、顧客自らが欲しい商品を買えるようになりました。

つまり、購買行動の主役が企業から顧客に替わったのです。

今問われるクロスメディアの価値


「企業から顧客へと購買行動の主役が変わった」というパラダイムシフトを、CXの提唱より一足早く
実践していたのがクロスメディアです。

「企業が自分の思惑を成就するために様々なメディアを駆使する」という姿勢ではなく、「顧客の心理・行動の変化を注意深く洞察し、無理のない範囲でその変化を後押しする」。無理をしても、顧客はこちらの思惑通りには動かず去ってしまうためです。

このアプローチが、現代の時代環境に最もフィットした姿勢なのであり、成果を生むための効果的な方法です。

無理に企業の思惑を押し付けても、顧客はその通りには動かず、逆に離れてしまう可能性もあります。だからこそ、今の時代には「クロスメディア」の価値が高まっているのです。

顧客シナリオを描くのは最初は戸惑うかもしれませんが、すぐに慣れるでしょう。

クロスメディアをクロスメディアたるものにしている「顧客シナリオ立案」に是非チャレンジしてみて下さい!

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