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デザインがビジネスにおいて重要な理由
視覚マーケティングという言葉をご存じでしょうか。視覚マーケティングとはビジュアルやデザインの考え方を取り入れたマーケティングの手法であり、問題解決方法です。企業はマーケティングやブランディングにおいてデザインという新しい視点を取り入れることで新たなブレイクスルーを起こす事ができます。
本記事では『問題解決の新しい武器になる 視覚マーケティング戦略』という書籍から、デザインの重要性についてお伝えいたします。
マーケティングに重要な視覚の利用
「視覚」によるマーケティング効果とは
視覚とはビジネスにおいていったいどのような効果があるのでしょうか。
見るという行為には「錯覚」と「期待」の連鎖があります。
例えば、太陽光が差し込み明るく、センスのいいオフィス空間と、コンクリートに囲まれ、雑然とした暗いオフィスとでは、あなたはどちらのほうが良い感情を抱くでしょうか?これは極端な例ですが、人は自分が好む景色を見て「良い時間が過ごせそう」など錯覚し、知らず知らずのうちに期待を抱きます。このような現象をデンマークの科学者トール・ノートランダーシュ氏は「ユーザーイリュージョン」と呼びます。
人間は視覚、聴覚、味覚などから多くの情報を取り入れて生活しています。そのなかでも視覚からは1000万ビットという情報が与えられており、これは人間が受け取る情報の90.9%を占めています。それらの情報の多くは無意識に入ってきてそのまま流れていってしまいますが、意識にとどまったわずかな情報を元に脳は勝手にシュミレーションをします。そのシュミレーションが錯覚を引き起こし、その錯覚は人に期待を抱かせるのです。
「見せる」事を最適化させることで、人は錯覚を起こし、錯覚は脳を騙し、人に期待を持たせます。そして、その期待は「すごい」「素敵」「面白い」などといった感情と結びつき、人を行動に駆り立てるのです。
視覚マーケティング戦略は「期待」や「希望」をもってもらい、購買行動につなげてもらうことができるのです。
ブランドイメージとなる世界観の統一
「見た目」の変化に人は敏感に反応します。企業が作っている製品、またその製品のパンフレットなど、企業が外に向けて発信しているすべてのビジュアルにも言えることです。
そしてそのビジュアルは自社のブランドイメージや世界観に大きく影響します。
「世界観」のことを広告デザインの業界では「トーン・アンド・マナー」とよんでいます。誰が見ても同じように感じるぱっと見の印象、世界観、雰囲気のことをいいます。視覚マーケティング戦略として、このトーン・アンド・マナーを意識的にコントロールすることで、多くの人を魅了することができます。
ブランド力をあげるデザインとは、市場に対して私たちはこうありたいというコミットメントをすることです。
また、世界観の統一が行われていないと、広告や宣伝で人を呼び込んだのにリアルな売り場をみてがっかりされてしまうなどということがあります。デザインが不誠実なコミュニケーションの道具になってしまわないためにも、同じトーン・アンド・マナーでブランドのイメージを統一する必要があります。
差別化するデザインとポジショニング
差別化するデザインをつくるには
新しいデザインの制作には過去の売り上げデータからの数字やアンケートだけでなく行動観察の分析が必要になります。将来的に未来で好まれるデザインが現在見える数字として姿を表すとは限りません。
しっかりとしたリサーチを経ずにいきなりデザインをしてしまうと、情報が足りず、狭い視野でのデザインしか生まれません。大切なのは、周辺情報から自身の製品・サービスがもつ価値を見つめ直し洗い出す事です。
日本国内では製品やウェブサイト、パンフレットなどにロゴを入れすぎたり、商品情報を詰め込みすぎたりという場面が多くあります。
一般的にブランド価値が低く、商品単価が低いものであればあるほどロゴやコピーといった情報が数多くパッケージに施されており、ブランド価値が高いものほどロゴは最低限の数しか入っておらず、情報がすっきりと整理されている傾向にあるため、情報を詰め込みすぎたデザインはあまり良いとはいえません。
このようにデザインからは、その商品のポジションがわかります。
- PBあるいはブランドが弱い商品・・・価格と品質のバランスと営業力で戦う商品
- 機能性商品・・・製造元・販売元ではなく、機能や効能で評価される商品
- ブランド商品・・・価値が認められている商品
ブランド商品は顧客に「安くなくても買いたい」などと思わせる商品です。例えばスターバックスやAppleなどが例としてあげられます。
価格競争から抜け出し、自社の商品・サービス力を高めたい場合は、ブランド商品のポジションをデザインで確保し、ブランド価値を高める戦略を考える必要があります。
パッケージデザインの役割
①「出会う」役割
お客様に商品へ関心を持ってもらうために、まずパッケージデザインでアピールします。
お客様の目に触れるように店舗への展示やカタログ掲載をしてもらうことで、見つけてもらい、さらに選んでもらいます。
②「守る」役割
保管や保存など、本来の機能です。瓶や缶、箱、チャック機能、など商品によって、品質を守るために必要です。
③「記憶に残る」
パッケージに触れた感触や視覚的な楽しみによって、商品を手にしたときの「かわいい」や「かっこいい」など感情的な高まりを呼びます。その感情の高揚がその商品のイメージを記憶させる手伝いをします。
上記のなかで、最も重要なのは記憶に残ることです。商品と出会った時の感情的な価値を演出することで、ブランド力を高めることにつながります。
デザインを問題解決の手段として捉えることで、市場にとって新しい価値を生み出してくれる企業としてブランド力で勝負できる、価格競争とは無縁の企業ブランディングになります。
「良いデザイン」とは
ここまで、デザインの重要性についてお話してきましたが、どんなデザインが「良いデザイン」といわれるのでしょうか。
経営者にとってはそのデザインによって売上が上がるデザインのことを”良い”とし、デザイナーにとってはデザインとして”良い”とされるデザインを作りたいと望んでいます。この二つを満たし、かつそれが中長期的に続き、そのうえで年々、市場が深くなっていく状態のことを「ブランド力のある商品」といえることができ、「良いデザイン」だといえます。
ビジネスマンはマーケティングの要素とデザインを上手く組み合わせるという考え方を持つことが重要なのです。
良いデザインによって仕様や仕組みに大きな変化がもたらされるとき「市場にとって新しい価値」が生まれます。新しい価値をデザインするとは、これまでに顕在化していたのに解決されることのなかった問題を解決する内部的な構造の変化をもたらすことです。
「市場にとって新しい価値」を作った例として、2013年にヒットしたダイソン社の「羽のない扇風機」があります。以前から子どもが扇風機に指を挟む事故が多発していました。そこで、ダイソン社は羽がなくても風が吹く仕組みとデザインを考案し商品化しました。これまでの扇風機とは一線を博した見た目と仕組みそのものに変化をもたらした結果、羽があることによって子どもが指をはさむ危険性を排除することができました。これはまさに「良いデザイン」であり、デザインと技術の融合で新しい価値が生まれ、それに伴い新しい市場までもが誕生しているのです。
経営者はデザインを問題解決の手段として捉える事が必要です。その思考ができるようになった時、市場にとって新しい価値を生み出す企業としてブランド力で勝負できる、価格競争とは無縁のブランド力のある企業になるのです。
デザインの重要性を視覚マーケティングという立場から見てみる↓
視覚的効果とは?ビジュアルマーケティングの新しい戦略