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イノベーションとは?その意味や種類、なぜ今注目されているのか
これからのビジネスシーンにとって企業存続や企業成長を推進していくためには「イノベーション」が欠かせません。しかし、日本企業はイノベーションを起こすにはいくつかの課題を抱えているとされています。
本記事ではイノベーションの意味や種類から企業が抱える課題やイノベーションを成功させるために必要なことまでご紹介いたします。
イノベーションとは
イノベーションの意味
イノベーションとは、新しい価値を生み出したり、社会に大きな変革をもたらしたりすることを意味します。イノベーションの語源はラテン語の「innovare」で、「新しくする、更新する」という意味を持っています。
イノベーションは日本語では「技術革新」と和訳されますが、必ずしも新しい技術の発明だけではなく、モノ、仕組み、サービス、組織、ビジネスモデルなどに新しい考え方や方法、利用法などを取り入れた革新や刷新も含む広い概念を持っています。
イノベーションの種類
イノベーションの概念はヨーゼフ・シュンペーター、クレイトン・クリステンセン、ヘンリー・チェスブロウの3人によって提唱されました。提唱者によってその分類やフレームワークが異なってくるため、以下で詳しく見ていきます。
5種類のイノベーション(ヨーゼフ・シュンペーター提唱)
経済学者のシュンペーターは、イノベーションを最初に定義したとされており、5種類に分類しました。
①プロダクト・イノベーション:新しい製品やサービスの創出
②プロセス・イノベーション:新しい生産方法の導入
③マーケット・イノベーション:新しい市場の開拓
④サプライチェーン・イノベーション:新しい資源の獲得
⑤オルガニゼーション・イノベーション:新しい組織の実現
ここでは、イノベーションをする対象に基づいて分類しています。
①プロダクト・イノベーション
今までにない品質や機能をもった新しい商品・サービスを開発すること。
②プロセス・イノベーション
生産方法や工程、流通経路などを改善し、事業成長や生産性の向上に貢献すること。
③マーケット・イノベーション
新たな市場への参入によって、新しい顧客やニーズを開拓すること。
④サプライチェーン・イノベーション
商品を作るための新しい原材料や資源の新規供給源やルートを開拓すること。
⑤オルガニゼーション・イノベーション
組織やビジネスモデルの変革によってその業界や企業が成長・強化すること。
イノベーションのジレンマ (クレイトン・クリステンセン提唱)
クリステンセンが提唱したイノベーションは「持続型(創造型)イノベーション」と「破壊的イノベーション」の2つに分類されています。
持続的イノベーションは顧客の意見や要望を取り入れながら従来製品の改良を進めるイノベーションであり、創造的イノベーションとも呼ばれます。これは市場で優位にある優良企業に多く見られるイノベーションです。
一方、破壊的イノベーションは既存のモノや概念にとらわれず、新しい発想で、全く新しい価値を生み出していくイノベーションであり、新興企業などによって引き起こされます。
この2つのイノベーションはビジネスにおいてどちらも重要です。
しかし、優良企業は、現在の利益を生み出している製品価値を破壊することができず、持続的イノベーションに固執しがちです。また、一般的に大企業は規模の大きい既存事業と比較して、新規事業や新技術は魅力なく感じ、さらに既存の事業とのカニバリゼーションを起こすリスクがあるため、新規事業・市場への参入が遅れる傾向があります。その結果、他社の破壊的イノベーションによって市場での地位を奪われてしまうのです。これがイノベーションのジレンマです。
このジレンマについて、秋元征紘著書である「なぜ今、シュンペーターなのか?」では次のように説明しています。
イノベーション・ジレンマは、現代の経営の現場であちこちに見出すことができる。
たとえば、イーストマン・コダックは、映像デジタル化技術を持っていながらフィルム事業に固執し倒産に至った。ライバル社の富士フィルムが、早くから「本業」ではない化粧品や薬品事業に力を注いで生き延びたのとは対照的である。
ウォークマンを売り出し、CBSソニーによる音源を含めた音楽事業に成功しながら、アップルのiPodやiTunesの軍門に下ることになったソニーもまた、イノベーション・ジレンマに苦しんでいる典型例だろう。
秋元征紘著『なぜ今、シュンペーターなのか』P58から引用
イノベーションのジレンマを克服するためには、既存事業と新規事業のバランスを取りながらも、起業家マインドを忘れずに新興市場への参入を積極的に行うことが必要なのです。
クローズドイノベーション/オープンイノベーション(ヘンリー・チェスブロウ提唱)
経営学者のチェスブロウは、企業が自社内で研究から開発までを完結して行う自前主義のイノベーションである「クローズドイノベーション」と、外部と協力して研究開発を行う「オープンイノベーション」の2つを対比させました。クローズドイノベーションは1990年以前に主流のイノベーションでしたが、現在ではグローバル化による市場の変化や人材の流動性の拡大、市場の激化などの要因によって、オープンイノベーションが主流になってきています。オープンイノベーションでは、知識やアイデアを共有することで、より高度なイノベーションが可能になるのです。
なぜ今イノベーションが注目されているのか
急速な技術の進化
昔に比べ、昨今の技術やテクノロジーの誕生から普及、そして進化するスピードは加速しています。今後もますます技術革新が加速する事が予想され、新技術が普及してもすぐに追い越され古くなってしまう時代となり、結果としてさらに市場の競争が激化していきます。そのため、世界的な競争力を上げるためにも、常に新しい価値を生み出すイノベーションが必要になっているのです。しかし、イノベーションは自然発生的には起こりません。現場の声を聞き、既存のアイデアを組み合わせて付加価値をつけることが重要なのです。
労働人口の減少
少子高齢化により、労働力人口が減少しています。2065年には2016年から労働力人口は4割減ると予測されています。(参考:みずほ総合研究所)このような状況では、労働力人口の減少による労働リソースが減少し、イノベーションを起こすにも手が回らないという状況になってしまうでしょう。そのためにも一人ひとりの生産性を高める働き方改革が必要です。働き方改革は、その取り組み自体がイノベーションを起こす可能性を秘めているのです。
日本市場全体の縮小
前述した労働人口の減少にも紐づきますが、昨今、日本の経済規模は縮小傾向にあります。グローバル展開を模索する企業も増えていますが、個々の競争力を上げるためにはイノベーションが不可欠です。イノベーションに成功すれば、競合他社がいないブルーオーシャンを一時的にでも独占することができます。もちろん新技術の普及や進化も早いためすぐにブルーオーシャンがレッドオーシャンになってしまうため、常にイノベーションが求められるのです。
企業がイノベーションを起こすために抱えている課題
前述したように、イノベーションは今のビジネスシーンに必要とされていますが、日本企業はイノベーションの創出に苦戦しているとされています。以下では日本企業がイノベーションを起こすために抱える課題についてみていきます。
短期的な成果を目指してしまい、中長期的な取り組みができない
イノベーションの創出にはある程度の期間が必要となる場合が多くあります。しかし、多くの企業は目の前の売り上げや利益を確保することに注力し、イノベーションに必要なエネルギーと時間を割けません。これでは、結果的に時代の変化に対応できず、競争力を失ってしまいます。イノベーションは短期的な成果ではなく、中長期的なビジョンを持って取り組むべきなのです。
経営層の意識改革ができていない
イノベーションを起こすには、経営層のリーダーシップが不可欠です。イノベーションを期待するのであれば経営層がイノベーションの重要性や方向性を示し、社員に挑戦する姿勢や失敗を許容する文化を醸成しなければなりません。しかし、日本の経営層は長年の経験や成功体験に囚われており、既存の事業ややり方に固執している人が多いのが現状です。これでは、新しい価値や考え方を生み出すことはできません。経営層は自らイノベーションの先頭に立ち、変革の思いと行動を示すべきなのです。
イノベーションに対する情報・人材不足
イノベーションの創出には、最新の技術や市場動向、社会・顧客のニーズなどの情報が必要です。また、それらの情報を分析し、アイデアを発想し、実現するための人材も必要になってきます。しかし、多くの企業はクローズドイノベーションであり、自社内の資源だけでイノベーションを起こそうとし、外部からの情報や人材を活用していません。これでは、既存の枠組みから抜け出すことはできないでしょう。企業はオープンイノベーションという考え方で、外部と積極的に連携し、情報や人材を取り入れるべきでしょう。
企業のローカル文化による消極的な姿勢
イノベーションを起こすにはグローバルな視点で社会や市場にアプローチする必要があります。しかし、多くの企業は自社のローカルな文化にとらわれており、他国や他業種の事例や知見に学ぼうとしません。このような消極的な姿勢では、世界的な課題やニーズに対応できず、イノベーションの機会を逃してしまいます。企業は自社の文化に固執せず、多様な視点や価値観を受け入れる姿勢が必要です。
イノベーションを成功させる為に必要なこと
時代や市場の変化に敏感になる
イノベーションとは、新しい価値を創造することです。しかし、価値とは時代や市場によって変動し、時代にあわせて今までになかったニーズや課題が生まれたり、消費者の嗜好や行動が変化したりします。そのため、イノベーションを起こすには、時代や市場や時代の変化に敏感になり、新しい機会を見つけることが必要です。例えば、コロナ禍でオンライン化が進んだことで、テレワークやオンライン教育などの新しいサービスが生まれました。常に新しい情報や変化に対してアンテナを張り、模索を続けることで時代に取り残されず、イノベーションを起こすことができるでしょう。
心理的安全性の確保
イノベーションとは、既存の常識やルールを覆すことでもあります。そのため、イノベーションを起こすには、失敗や批判を恐れずに挑戦できる環境が必要です。組織としては、心理的安全性を確保し、発言しやすい空気づくりや人材の育成を行うことが重要です。「企業がイノベーションを起こすために抱えている課題」でもあげましたが、経営層の意識改革によるイノベーションへの理解は重要でしょう。
イノベーションを起こしやすい環境づくり
イノベーションとは、多くの場合、多様な視点や知識を組み合わせることで生まれます。そのため、イノベーションを起こすには、自社内だけでなく、外部の人材や情報とも積極的に交流することが必要です。組織としては、オープン・イノベーションの仕組みを整え、社員同士コミュニケーションをとりやすい環境を整えたり、他社や他業種との共創やライセンス供与などを行うことが重要です。
また、各個人も自分の強みや興味を活かし、自律的に学びや実験を続けることが求められます。
まとめ
イノベーションとは、新しい仕組みや価値を創出し、社会に大きな変革をもたらす事を指します。これからのビジネスシーンにおいて、企業が今後も存続し、持続的な成長をしていくためにはイノベーションの推進は欠かせません。
イノベーションの創出に成功すれば自分や組織の価値創造能力を高め、新しいニーズや課題に対応でき、企業が飛躍するチャンスをもたらす可能性を秘めているのです。
イノベーションについて詳しい記事はこちら↓
『なぜ今、シュンペーターなのか』