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想起集合と知名度の関係とは?再生知名度は3位以内に入らないと効果がない!?
どんな企業でも知名度はないよりあった方が良いというのは疑いないことでしょう。
誰でも、見たことも聞いたこともない商品より、多くの人が知っており自分自身も知っている商品を買いたいと思うでしょう。
しかし実は知名度が販売に効果を発揮するにはある一定レベル以上の知名度にならないと効果を発揮しません。では、その「一定レベル以上の知名度」とはどのくらいのことを指しているのでしょう。
それはマーケティング概念の一つである「想起集合」というものと密接に関係しています。
本記事では想起集合と知名度の関係性について詳しくお伝えします。
【監修プロフィール】
小川 共和
小川事務所 代表
東京大学文学部仏文科卒業後、電通に入社。
本社マーケティング・ソリューション局次長、電通イーマーケティングワン(現電通デジタル)専務取締役経て小川事務所を設立。
著書に『マーケティングオートメーションに落とせるカスタマージャーニーの書き方』 『マーケティングオートメーションでおもてなし~ITがマーケティングにしてくれること』 『戦略から始めるエンゲージメントマーケティング』(クロスメディア・マーケティング)
想起集合(Evoked Set)とは
「あなたはいつもどんな台所用洗剤を買っていますか?」との質問に対して
「銘柄Aか銘柄B、時には銘柄Cも買うかな」と回答したとしましょう。
その時「銘柄A、銘柄B、銘柄Cは回答者の想起集合(Evoked Set)に入っている」と言います。要するに、想起集合とは「人が自身の購入の選択肢として認識している銘柄」のことを指します。この「想起集合」に入ってないと、お客様に買ってもらえるチャンスはほぼありません。
そして、この想起集合は再生知名度(※)と極めて近い関係にあります。
想起集合は単に記憶しているだけでなく、自身の購入の選択肢に入っていることを指しているため、再生知名度とは意味が違うことは確かですが、実際に調査すると大抵同じような結果となります。
そのため、複雑な市場じゃなければ基本的に「想起集合≒再生知名度(純粋想起)」となります。
※再生知名度とは:調査対象者にヒントを提示せずに知っているブランドを思い出してもらう方法です。再認知名度、再生知名度、第一再生知名度という三つの知名度のうちの一つ。
詳しくはこちら→『3つの知名度を理解して、最適なマーケティング施策を実施しよう』
想起集合(Evoked Set)は「3つ以内」が大切
そして、この想起集合には理論的に立証された訳ではありませんが、一つの経験則があります。それは
「人の想起集合は3つであることが多い」
「人の想起集合は2つか3つ」
ということです。
要するに、人は何かを購入する際、3つくらいの選択肢の中から比較検討し購入決定することが多いということです。
競馬では「本命、対抗、穴馬」や「両者一騎打ち」という事がありますが、すなわち人が真剣に比較検討するのは対象が3つか2つの時だということです。
4つ以上になると比較検討が複雑で面倒になるので、ちゃんと比較せず短絡的判断をするか、あるいは3つになるまで対象を絞ってから比較検討するのです。
ということは再生知名度( ≒想起集合)で3位以内に入らなければ商品やサービスは売れないのです。
想起集合の3位以内に入るためには何をすれば良いか
再生知名度( ≒想起集合)3位以内に入らなければ売れないということは上記で理解できましたが、では一体どうすれば3位以内にはいることができるでしょうか?
一番確実に3位以内になるのはその商品カテゴリーのトップ銘柄になることです。
一番売れている商品になればまず確実に3位以内にはいりますが、これが実現できるのであれば何も悩むことはありません。
また、トップ銘柄と良い勝負をしている二番手も大抵は3位以内に入るでしょう。これは本命と対抗という立場です。
では、二番手にもなれない時はどうしたら良いのでしょうか?
もちろん、一番手や二番手と同じような商品・サービスでは存在感を発揮できないでしょう。ここで重要なのが「差別化」です。一番手にも二番手にもなれないのならば、一番手や二番手と違う特徴、違う価値を打ち出すことが必要になります。
「平均的大多数の人(普通の人)は一番手か二番手を買ってもらって大丈夫。でも〇〇を期待している人は我が社の商品が一番良い選択なので買って下さい。一番手も二番手も〇〇はあまり期待できないですよ」
とアピールするのです。
このアピールとは単に広告やカタログで宣伝することでなく、実際にそのような商品設計にすることです。そして、自社の売りである〇〇を期待する人が多ければ三番手にはなれます。場合によっては一番手二番手を抜き去ることも出来ます。
また、〇〇を期待する人が少なければニッチ商品として立ち位置を確立し、生き残りをかけます。たくさん売れなくてもユニークさで存在感を発揮出来れば再生知名度で3位以内になれる可能性があるのです。
3位以内の別の解釈
「想起集合3つに入るため再生知名度3位以内に入ることを目指す」というのは別の捉え方も可能です。それは
「想起集合3つの中に入る相手(顧客)は誰なのか?」と逆から考えて見るのです。
市場全体で見ると銘柄A、銘柄B、銘柄Cが上位3つですが、全体の中のある特定の市場(=特定の顧客)に絞ると銘柄A、銘柄P(自社)、銘柄Qが上位3つだとします。この場合、市場全体を狙うのではなく、この特定の市場(特定の顧客)にターゲットを絞り狙うのです。市場ボリューム(顧客数)は小さくなるけれど、この特定の市場(顧客)に限って言えば確実に3位以内となるのであれば、この市場(顧客)を狙うという考え方です。
これをマーケティング用語では「市場細分化(セグメンテーション)」と言います。
セグメンテーション(市場細分化)で3位以内を狙う
「携帯電話、大手3社にはどうしてもかなわないが、格安の携帯電話なら3位どころか1位を取れるだろう。なぜなら、他の格安携帯会社と比較すると自前の通信基地を持ち通信が安定しているという強みがあるから(某格安携帯会社)」
「普通のビールだとアサヒスーパードライ、キリンラガー、サッポロ黒ラベルの牙城は崩せないが、プレミアムビール市場だとプレミアムモルツに次ぐ2位のポジションは可能だろう。あわよくば再び1位に返り咲きたい(某プレミアムビール会社)」
「MA(マーケティングオートメーション)の中では、セールスフォース(Account Engagement)、マルケト(Adobe Marketo Engage)、オラクル(Eloqua)が3強だが、普通の日本人の初心者にとって使いやすい国産MAの中では1位、最低でも2位にはなろう(某MA会社)」
「機能・性能より価格の安さを期待する携帯ユーザー」
「価格が高くてもより嗜好性が強く高級なビールを期待する客」
「ネームバリューや高機能以上に『誰でも使いやすい』を期待する顧客」
といったように市場(お客様)を限定し、細分化された市場(セグメンテーション)で3位以内、さらに欲を言えば1位を狙うという考え方です。
セグメンテーション(市場細分化)とマーケティング戦略
マーケティング戦略を考える時、最初に考えるのがこのセグメンテーションです。
市場全体を一つと捉えるのでなく、自社の強みを発揮でき、競争で優位に立てるのは市場全体の中のどこにあるのかを考えるのです。
そのために市場全体を何らかの視点で分割し、その分割した市場を狙って勝負するのです。
まず市場を分割・細分化(Segmentation/セグメンテーション)し、そのどれかに狙いを定め、ターゲット市場(顧客)を決め(Targeting/ターゲティング)、更にその狙ったターゲット市場で自社をどのような存在として打ち出せばライバルに勝てるかを考えます(Positioning/ポジショニング)。
これをマーケティング用語では頭文字を取ってマーケティング戦略の「STP」と言い、最もベーシックなマーケティング戦略立案方法なのです。
STPについてさらに詳しい記事はこちら↓
『STP分析とは?マーケティングの基本と具体例を解説!』
細分化された市場(顧客)で再生知名度3位以内必達!
当該商品カテゴリー全体の中で再生知名度3位以内を取れるのであれば理想的ですが、それが難しい時は特定の市場(顧客)に狙いを絞り、その中で3位以内、出来れば1位を目指します。
全体より顧客の数が少ないので頑張って1位を狙うことが大切です。
まとめ:再生知名度( ≒想起集合)3位以内を必達!
自社の商品・サービスが売れるためにはまず想起集合(Evoked Set)に入らなければならず、通常想起集合は2〜3つとされています。
この想起集合とほぼ同じ数字の出方となるのが再生知名度です。要するに、再生知名度( ≒想起集合)で3位以内に入らないと商品・サービスは売れません。
そして、再生知名度で3位以内に入るには、現実のシェアでトップ、もしくはそれに準じるポジションを獲得するか、何らかの差別化を行い一番手や二番手とは異なる存在感を獲得するかの二択です。
しかし、もし商品カテゴリー全体での3位以内が難しい場合、逆に自社が3位以内に入れる市場(顧客)を探すことも一つの手です。
すなわち、細分化(セグメンテーション)された特定の市場(顧客)の中で3位以内、可能なら1位を目指すことが、マーケティング戦略として重要なのです。
知名度・認知度についてさらに詳しく知りたい方はこちら↓
『知名度・認知度をあげる方法!これを読めばすべてが分かる!』