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オウンドメディア戦略には、ストーリーの発信が有効
PRにお金をかけても、一時的な露出で終わってしまったり、プレスリリースを作っても、流すだけになってしまうなど、一過性のものになりがちな広報活動に、課題を感じている企業は多いのではないでしょうか。消費者やユーザーの記憶に残り、ファンになってもらうためにはどんな情報発信をすればいいのでしょうか。『鬼速PDCAシリーズ』など10万部を超えるベストセラー書籍の出版に数多く携わり、現在はデジタルを通じて良質な情報をユーザーに届けるマーケティングや採用活動を支援する弊社メディア・コンテンツ部の社員に聞きます。
ナラティブを取り入れ、フロー型からストック型へ
──根本さんは、今の広報活動にどんな課題があるとお考えですか?
いろんな企業様の支援をさせていただく中でよくお聞きするのが、さまざまな部署からの要請に対応するだけで精一杯になってしまう、というお話です。プレスリリースをつくっても流すだけになってしまったり、メディアに掲載されても次から次へと溢れてくる情報に飲まれて、一過性のものになってしまったり。そういった課題をよく伺いますね。
──情報発信が流れていってしまう。この課題にはどのように対応していくべきでしょうか。
フロー型になってしまっている情報発信ではなく、我々が提案しているのは、ストック型の広報活動を行うために情報発信基地となるオウンドメディアを持つことです。これまで流れていってしまっていたプレスリリースやメディアへの出演情報などを、オウンドメディアの中に蓄積していきます。SNSやプレスリリース、メールマガジンなど、頻繁に発信している情報にオウンドメディアのURLを入れ、ユーザーを誘導することで、オウンドメディア内のさまざまな記事を回遊してもらえるようになります。点だった施策が面の広報活動に代わり、継続的により多くの情報を届けることが可能になるのです。
──フロー型ではなく、ストック型の広報活動が重要なのですね。
そうですね。そしてもうひとつ重要なのは、ナラティブを取り入れていくことです。ナラティブは日本語でいうと「物語やストーリー」ですね。
ナラティブについて詳しい記事はこちら↓
『ナラティブとは?意味やビジネスにおけるストーリーとの違いを解説!』
まずはブランディングについて確認しておきましょう。
皆さんは広告、PR、ブランディングの違いがわかりますか。例えばレストランがあったとして、事業者が「ここは美味しいレストランです」と発信するのが広告です。一方でPRは、事業者と顧客の間に第三者が入って、「私を信じて。ここはとても美味しいレストランですよ」と事業者を紹介している状態。これらに対し、ブランディングがうまくいくと、顧客が「ここは美味しいレストランですね」と言ってくれている状態になります。
広報PRの理想は、このブランディングされている状態を作ることです。
ブランディングがうまくいってファンができた場合、ファンがその会社やサービス、商品に感じているのは2つの価値です。品質や性能などに対して感じる「機能的価値」、そしてデザイン性やストーリーなどに対して感じる「情緒的価値」です。我々はこの情緒的価値を生み出すストーリーに注目しています。
人は、古来から神話や昔話の形でさまざまな知恵を後世に伝えてきました。ただ情報を伝えるだけならば箇条書きにしても良かったでしょうが、そうではなくストーリーの形で残してきました。古くから人々はストーリーの力を活用してきたという事実があります。
なぜかというと、ストーリーは人の感情を動かすことで記憶されやすくなる、という特徴を持っているからです。
過去6度に渡り記憶力日本選手権大会で優勝している池田義博氏は、「記憶力を向上させるには、感情と絡めて記憶することが重要だ」と言っています。脳科学的に言うと、記憶を司る海馬のすぐ隣には、感情に反応する扁桃体という部分があり、扁桃体が動くと海馬も同時に強く働くことがわかっています。感情を伴うものは強く記憶され、それをエピソード記憶と呼ぶそうです。つまり、ストーリーによって人の感情を刺激することで、記憶に残りやすくなるのです。
ブランドがストーリーを発信することによって、人々の記憶に残り、さまざまな場面で想起されやすくなります。だから情報発信をする際に、ストーリー性を持たせることが非常に重要です。先ほどは企業視点で、オウンドメディアを持つことで情報がストックされるとお話ししました。ユーザー視点で言うと、ストーリーによって感情が動かされ、記憶に残ることで情報が記憶にストックされていくのです。
ストーリー発信基地を持つメリット
──ストーリー発信基地として、ストック型のオウンドメディアをつくる。これによって、どんな効果が期待できますか。
まず、企業の成長の限界を突破する力になります。どの企業も、どこかで成長が鈍化し限界を迎える時がきます。通常、企業はマーケティングによって顕在層にアピールすることで顧客を増やしています。しかし限界を突破していく際には、従来のニーズだけでなく顕在層そのものを拡張していく活動が必要になります。
先に話したようにストーリーには感情を刺激し、記憶に残りやすいという効果があります。ストーリーによって潜在ニーズを掻き立て、オリジナルの顕在層を増やしていく。それによって顧客が増え、その人たちがファンとなってまた顕在層を増やしてくれる、良いサイクルを生み出す効果が期待できます。
加えて、オウンドメディアでストーリー性を持った専門性の高いコンテンツを作っていけば、企業のブランディングにも寄与します。成長の限界突破を促進するマーケティングの面だけでなく、会社の考え方が浸透することで社員のインナーブランディングにも繋がります。さらに、よりミッションに共感してくれる人材が集まりやすくなったり、早期退職者が減ったりする場合もあります。オウンドメディアでストーリーを発信することでPR、採用、マーケティングの可能性を広げていくことができるのです。
オウンドメディアリクルーティングについておすすめ書籍はこちら↓
『オウンドメディアリクルーティングの教科書』
中立型オウンドメディアが可能性を拓く
──実際にオウンドメディアを立ち上げる際は、何に気を付けるべきでしょうか。
よくお客様からお聞きするオウンドメディアが失敗に終わる理由は、主に二つです。一つは、自社でコンテンツを作り続けるのが難しいこと。もう一つは、コンテンツ制作を社外に丸投げしても、良いコンテンツが上がってこないことです。継続が難しくなり、途中で止まってしまう企業様が多くいらっしゃると聞きます。こういったことを解決するべく、コンテンツを作り続けてきた弊社でサポートしていければと、オウンドメディアのサービスを展開しています。
──出版社がオウンドメディアをサポートするメリットはなんでしょうか。
まずはコンテンツをつくるノウハウに長けていること。加えて、Googleが定義する検索品質評価ガイドラインであるEEATに合ったコンテンツづくりができるので、ウェブ上で評価されやすいということです。
みなさんがウェブ検索をする際、検索上位に似たようなコンテンツが並んでいるのを目にすることがあると思います。各社がSEO対策をすればするほど、似たような記事が増えてしまう現状があるのです。
Googleは検索でユーザーに、より良い情報を提供することをビジネスの根幹に置いています。だからこそ、著者や主体者の経験を盛り込んだ、オリジナル性のある記事を評価するガイドラインを出しました。我々はこれまでに数多くのコンテンツを作ってきています。弊社と繋がりのある著者や専門家の方と対談したり、社内の方にインタビューをしたりと、オリジナル性のあるコンテンツ作りが可能です。
EEATについて詳しい記事はこちら↓
EEATとは?SEOで重要視される評価基準について解説!
──コーポレートサイトではなく、オウンドメディアである必要性はありますか?
コーポレートサイト内でコンテンツを展開するケースは確かに増えています。しかし、どうしても宣伝っぽさが抜けないことが多いため、中立型のオウンドメディアを持つことをお勧めします。フラットな目でストーリーに触れてもらうことができますし、有識者や専門家、他社に取材を申し込んだ際、引き受けてもらえる可能性も高いでしょう。BtoB企業の場合、取材をきっかけに見込み顧客となる企業と関係性を構築することもできるので、営業のアプローチとしても活用できるメリットがあります。
──具体的に、ストーリー発信基地となっている中立型オウンドメディアの事例を教えてください。
例えば、書籍を活用したオウンドメディアがあります。書籍のPRとして立ち上がったメディアであり、著者自身を認知してもらうことを目的につくったそうです。
メディア内には著者自身の情報発信や著名人、クライアントとの対談などのコンテンツがあります。他メディアで掲載された場合も、サムネイルで展開し、他メディアでの掲載情報も、オウンドメディア上で展開し、ストックすることで多くの読者に触れてもらうことができるのです。
他には、カテゴリ創造型のオウンドメディアのケーススタディもあります。
元々ウェブ広告中心でしたがだった企業が、デジタルシフトを事業の中心に据え、名前も変更しブランドチェンジをする際に立ち上げたメディアです。著名人との対談など自社情報も発信していますが、デジタルシフト界隈で注目されている企業のトップや有識者を取材したり、デジタルシフト関連ニュースの発信や関連サービスのまとめ記事を掲載したりするなど、さまざまな情報を中立的な立場から発信しています。他社のプレスリリースなども載せていることによって、デジタルシフトに関心のあるユーザーが集まってくるのです。こうすることで自社事業に親和性の高い人たちと接点をつくることができています。
これらは一例ですが、中立型のオウンドメディアを持ってストーリーを発信していくことで、さまざまな可能性が広がります。
出典元:オウンドメディアの学校