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「ストーリーブランディング」は、中小企業の成長の鍵

# ストーリーブランディング
# ブランディング施策

ブランディングはハイブランドや大企業のものだと思っていませんか?

誤解されがちな「ブランディング」という言葉。ブランディングとは何を指し、どう進めていくべきなのか。中小企業にこそ知ってほしいストーリーブランディングについて、クロスメディアグループプロジェクトマネジメント室室長、高橋孝介に聞きました。

成長率が8倍に!?ブランディングの効果

──はじめに、ブランドとは何か教えてください。

近代マーケティングの父とよばれるフィリップ・コトラー氏は、ブランドを「個別の売り手または売り手集団の財やサービスを識別させ、競合する売り手の製品やサービスと区別するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはこれらの組み合わせ」と定義しています。

例えばAppleやメルセデス・ベンツは、マークを見ただけでブランドの世界観や商品の品質の良さなどが伝わってきます。こうしたマークもブランドを形づくるものの一つであり、他社との差別化を実現します。ブランディングは広告やPRとも混同されがちです。違いをお伝えすると、広告は企業から消費者に対して、自分たちが言いたいことを伝えるコミュニケーション。

例えるなら店側が消費者に対して、「うちは美味しいレストランだ」と宣伝しているイメージです。PRは、第三者である出版社やテレビ局、メディアなどが、企業や商品やサービスの良さを伝えてくれる状態。第三者が「あのレストランは美味しい」と紹介してくれるので、より信憑性が高くなります。

これらに対してブランディングは、消費者に世界観や良さが伝わった状態をつくることです。我々が出版している書籍の中にも、「ブランディングとは世界観をつくること」という一文があります。

例えば洋菓子店なら、商品だけでなく、ロゴもパッケージデザインも、陳列方法もパンプレットも、ウェブサイトやECサイトも広告も、全てがブランディングに必要な要素。

世界観が統一されることで、ブランドとして認知されるようになります。ブランディングがうまくいくと、消費者が来店した時に、「ここは美味しいレストランだと一目でわかりました」「ここが良いレストランだと知っています」と言ってくれる状態になります。世界観が伝わり、競合との差別化ができるのです。こうした点から、ブランディングは大企業だけでなく、むしろ中小企業こそ取り組むべき施策だと考えています。

出典:小山田育、渡邊デルーカ瞳 著『ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと 世界に通用するデザイン経営戦略』p75

──ブランディングには、具体的にどのような効果がありますか。

ここに、ブランディングができている会社とそうでない会社の成長率を比較したデータがあります。世界最大のブランド資産データベースによると、ブランディングができている企業は膨大な広告費をかけている企業よりも3倍の成長率があり、何もしなかった場合と比べると最大8倍にもなるそうです。

商品やサービスを売るための広告施策を行っている企業さんは多いと思いますが、顕在化している顧客をターゲットにしているため、いずれ限界がきます。ブランディングをすると顧客となるファンを増やすことができるので、ブランディングした上で広告施策を行うとより大きな効果が出るのです。

具体的な事例でも考えてみましょう。例えば、目の前にエビアンのラベルが付いた水と何のラベルもない2本の水があったとします。

両方とも水ですので、機能的価値は変わりません。しかしこの2本が置いてあった場合、多くの人は見覚えのあるエビアンを選ぶ方が多いのではないでしょうか。

それはこのパッケージだけで信頼できる商品であることがわかるからです。そしてブランドにはそれぞれ背景があります。「エビアン」は世界有数の自然保護区・フレンチアルプスの街の名前から取っているそうで、その水がどのようにして生まれてるのか、どんな歴史があり、いかに環境に配慮しているか、などを発信しています。(エビアンHP参照

また、普通のスマートフォンとiPhoneがあった場合も、iPhoneが選ばれているというのが現実です。これも、電話をしたりWeb検索したりLINEをしたりといった機能的価値はほとんど変わりません。

しかし、iPhoneには制作ストーリーがあります。たくさんあったボタンをホームボタン一つに集約した、この挑戦にどれだけこだわりが詰まっているかを多くの人が知っています。だから機能がほとんど変わらなくても、価格が高くても選ばれる。これはiPhoneのブランド力によるものです。

感情に働きかけるストーリーの重要性

──ブランディングがうまくいくと、機能的価値がほとんど同じでも選ばれる、というお話がありました。一体何が、選ばれる要因になるのでしょうか。

ブランドをブランドたらしめるのは、「情緒的価値」です。

先ほどのiPhoneでも、ブランドが形作られる過程でスティーブ・ジョブズの背景や、なぜ会社や商品が作られたのかのストーリーが語られてきました。これが情緒的価値です。それはデザインや、経営者のビジョンや会社のミッション、SDGsやCSRなどさまざまですが、ストーリーとして語られることが重要です。ストーリーはどの会社にもあります。これを発信していくことが、ブランディングには欠かせません。

なぜ、ストーリーがブランディングに重要なのか。それは、ストーリーにした方が、人は記憶するからです。脳には、記憶を司る海馬のすぐ隣に、感情を司る扁桃体という部分があります。そのため、感情が動くと物事はよく記憶されるんです。ストーリーには始まりと終わりがあり、その中でさまざまな感情の起伏があります。そのため、記憶されやすいのです。

人は昔から、神話や昔話などのストーリーを継承してきています。でも、そういった話は突き詰めると、ここへ行ったら危ないとか、人とは喧嘩をするなとか、箇条書きできる教訓に収まるものが多いですよね。しかしそういう風には伝えずに、ストーリーの力を活用してきた。だから長い間、記憶されてきたのです。記憶力日本選手権で優勝した方も、「記憶力の向上には、感情に絡めて覚えることが大事」だとおっしゃっています。

例えば、「1192」、この数字だけを記憶しようとするとなかなか難しいでしょう。しかし下に源頼朝の写真を入れて、「いい国つくろう鎌倉幕府」と覚えると記憶しやすい。これは物語とは言えないかもしれませんが、「いい国つくろう」という意志、ある種の感情が乗っているために記憶しやすくなっています。

──なるほど!人に記憶される、情緒的価値のあるストーリーが重要なのですね。ただ、ストーリーと言われても何を指すのか難しく感じます。

そうですね、ストーリーってなんだろうと思う方もいらっしゃると思います。非常にわかりやすい定義をしている企業さんがあったので、共有させていただきます。

『はじまりとおわり。
その間にある特別な何か。
その何かが、離れた人々を近づける。』

Netflixプレスリリースより本文抽出

我々も本をつくっていますが、始まりと終わりの間にあるものがストーリーになる、という考え方に共感しました。企業様でしたら、初めに志があり、そこから実際に会社をつくり、未来には「こうなりたい」というビジョンがあると思います。過去と現在と未来を繋げれば、それはストーリーになるということです。ちなみにこれは、Netflixさんの初の企業広告からの引用でした。

書籍、ウェブ、動画、音声メディア…ストーリーを軸にした多様なアウトプット

──では、実際にどのようにブランディングを進めていけば良いでしょうか。

まず、核となるストーリーが重要です。私たちは、ブランドストーリーはカルピスの原液のようなものだと思っています。

カルピスの原液は水で割ってもいいですし、炭酸を入れても美味しいですし、果汁を混ぜてみてもいい。一回ストーリーができてしまえば、そこから派生してさまざまなアウトプットを作り、世界観を作っていきやすくなります。核となるストーリーがあることで、商品そのものだけでなく、Webサイトやパッケージなども統一され、ブランディングしやすくなるのです。

ストーリーを作るためにはまず現状の分析を行います。過去の歴史や現在との関係も重要ですし、他との差別化を図っていくため、市場環境もリサーチします。そこから過去と現在と未来を繋げ、ストーリーを作っていきます。また、ストーリーは作って終わりではありません。コンテンツとして世の中に出していく必要があります。ここで重要なのは、コンテンツは入れ物が決まっているわけではないということです。入れ物、つまりアウトプットの方法で言えば、自社のサイトやオウンドメディア、外部メディアにストーリーを出していくことも可能です。

書籍や冊子、パンフレット、雑誌など紙にすることもできますし、今だと漫画やYouTube、広告という方法もあります。動画やテレビ番組などはコストがかかるため中小企業さんには難しいかもしれませんが、最近ではポッドキャストやラジオCMなど音声メディアも盛んです。

どのようなメディアで届けるかは多種多様で、ストーリーが出来上がれば、より自社と相性の良いアウトプット方法を考えて行っていくと良いでしょう。

──ストーリーを核として、状況に応じてアウトプットしていくのですね。具体的な事例を教えてください。

まず、コーポレートサイトのブランディング事例をご紹介します。ある製造業に特化したコンサルティング企業様のコーポレートサイトを作らせていただいています。

こちらは「我々は何者であるか」をまとめたコーポレートスローガンを初めとし、企業全体で大切にしていることをメッセージの形で発信したり、従業員の皆様のインタビューコンテンツを制作したりしています。また、製造業に特化した企業様ということで、いまの日本製造業に必要なアプローチなどをまとめた本も作らせていただきました。また、ある寝具メーカーさんでは、商品開発にも携わらせていただきました。「人が寝る時の枕のあるべき姿」からこだわって商品を作っていき、そのストーリーを冊子形式で発信しています。

あとは書籍ですね。ストーリーを作るという意味では、一番やりやすい方法になります。通常200ページほどあるので、8万〜10万字ほどの情報量を詰め込むことができますし、物語を伝えやすいメディアになっています。我々も、さまざまな業態業種の企業様の書籍を作っています。文字ではなく、漫画で作らせていただくこともあります。

このようにアウトプット方法はさまざまです。だからこそブランディングする上でまずは、核となるストーリーを作ることが重要だと私は考えています。

ストーリーブランディングについて詳しい記事はこちら↓
心動かす最強のストーリーブランディングを構築するのは3つのレベルのストーリー!
ストーリーブランディングとは?ストーリーブランド戦略の事例を解説

【プロフィール】

高橋孝介 (たかはし こうすけ)
クロスメディアグループ株式会社 プロジェクトマネジメント室 室長

2006年株式会社アサツー ディ・ケイ(現ADKホールディングス)入社。営業部門および 媒体部門で企業のブランディング、マーケティング、プロモーション業務に従事。2016年クロスメディア・パブリッシング入社。新規事業開発や書籍編集、全社のブランディングや人材採用、商品のPR・プロモーション業務を行う。「日経TRENDY2018年ヒット予測」第3位、「日経MJ2018年上半期ヒット商品番付」にそれぞれランクイ ンする事業を開発し、メディアで話題を呼ぶ。編集者としては、アウターブランディングやインナーブランディングをテーマとした書籍『人がうごく コンテンツのつくり 方』『攻めるロングセラー~パインアメ「中の人」の心得~』『こんな会社で働きたいシリーズ』などを手掛けている。