本書はリーダーシップとチームマネジメントについて書いた本です。 ここで言う「自分がいなくてもうまくいく仕組み」とは、決してリーダーである自分が楽をするためのものではありません。 リーダーの仕事を部下に任せることで、部下を成長させ、そうして生まれた時間で、リーダーは新しいプロジェクトを立ち上げ、自らも成長するという好循環のサイクルを生み出すワークスタイルのことです。 リーダーに求められているのはチーム(組織)の利益であって、部下と同じ仕事にあたることではありません。 仮に、それで利益が上がっていたとしても、将来の大きな飛躍は望めないでしょう。現状維持は停滞です。 また、そのようなワークスタイルで仕事を続けることは、部下の成長の機会を摘むということにもなります。 リーダーは雑事に時間をとられることなく、新しい価値の創造に注力しなければ、部下を守ることもいずれできなくなってしまいます。 自分がいなくてもうまくいく仕組みとは、それに抗するためのほぼ唯一の手段です。 携わっているビジネスが職人芸的な世界のものでなければ、あなたがどれだけ優秀なプレーヤーであっても、最終的には一人のできる人よりも、複数人でしっかりとスクラムを組んだチームのほうが、仕事の量も質も上がるのです。 そこで、優秀であるがゆえに、自分のやっていることを部下にわかりやすく伝えることができなかったり、自分がやってしまったほうが早いからと、部下に仕事を振らずにいた結果、抱え込みすぎて効率が悪くなってしまったりするようでは「名選手、名監督にあらず」という格言そのままです。 しかし、そんなリーダーでも、まだ間に合います。 今からでも一流のプレイングマネージャーになることは可能なのです。いや、ならなければいけません。 会社の経営者であれ、企業内の部長や課長といった管理職であれ、多くの企業では、リーダーがいなければ仕事にならないチームがむしろ一般的であるようです。 これは、非常に危険な徴候です。正直なところ、私はそれを理解できていませんでした。 どうも、私たちのワークスタイルは一般的ではないようだぞ――そう気付いたのが本書の執筆のキッカケです。
