マーケティング

クレドとは?導入のメリットや注意点について詳しく解説

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

投稿日:2022年7月20日 | 最終更新日:2024年1月19日

従業員への浸透が目的
クレドとは?
詳しく解説

「クレド」という言葉をご存じでしょうか?

企業理念や経営理念と同様にビジネスワードとして、近年ではこのクレドの重要性がさまざまな企業で注目されています。

本記事ではクレドについて詳しく解説し、導入のメリットや注意点についてもご紹介します。

クレドとは

クレド(Credo)とは、ラテン語で「志・約束・信条」を表す言葉で、ビジネスにおいては「企業活動をしていく上で心がける価値観や行動指針を表した言葉」のことを指します。

これは企業側(経営陣)が一方的に作成するのではなく、従業員が主体となって作成される具体的でわかりやすい信条や目標への指針といえます。

アメリカの大手企業ジョンソン・エンド・ジョンソンがクレドを考案し、全世界に広まったとされており、クレドの作成・導入は企業や所属する従業員の成長を促す一助になるため、導入する企業も増えてきています。

経営理念や企業理念との違い

ビジネスの場面で、クレドは企業理念や経営理念との明確な違いはなく、混同されることが多々あります。

企業理念や経営理念は、企業または経営者が企業活動していく上で大事にしている考え方や価値観のことをいいます。

その企業の存在意義や目指すものを、従業員、ステークホルダー、顧客、世の中に対して提示するものです。

一方、クレドは上記で「企業活動をしていく上で心がける価値観や行動指針を表した言葉」とした通り、企業活動の信条や根本的な考え方、指針を示すものです。このような点においては、企業理念や経営理念も同じようなものと捉えられ、理念や行動指針などはクレドに言い換えられることもあります。

あえて区別するなら、クレドは企業理念や経営理念をより具体的かつ実践的にし、全社員へ浸透を意識し、わかりやすく文章化されているものといえます。また、クレドはその時代に則した考え方を提唱したり、社会の変化に合わせて日々進化させていくことも大きな違いといえるでしょう。

このように、クレドを定める目的として「従業員への浸透」は最重要といえます。

そのため、クレドの内容を文章化したカードの配布や、必ず目に入るところへの掲示などを行い従業員の視認性を高めている企業も多いのです。

クレドの類義語として、ビジョンやミッション、バリューという言葉があります。こちらのワードについては以下の記事で詳しく説明しています
ビジョン(vision)とは?ミッションとバリューの関係性を解説

クレドの必要性

近年、クレドがさまざまな企業に注目されるようになった背景には、多数の企業の不祥事があるとされています。

不祥事による経営破綻や、モラルを欠いた内容のSNS投稿による炎上などさまざまな問題の多発により、日本のみならず海外でも、企業のモラル意識の向上が求められるようになりました。

実際に日本ではこのような問題を受け、2006年に企業の内部統制を強化する『金融商品取引法』や、法令違反を告発した労働者保護を目的とする『公益通報者保護法』が制定されました。

企業がクレドを策定し提示することで、従業員が守るべき信条や価値観の浸透に繋がり、結果としてモラル意識の向上、コンプライアンス遵守も期待されます。

このように、時代の流れにより企業や従業員のモラルやコンプライアンスがさらに重要視されはじめたことから、クレドは注目されるようになったのです。

クレド作成のメリット

クレドを作成し、従業員への浸透を促す事はさまざまなメリットがあります。以下ではそのメリットについて詳しく見ていきます。

人材育成

クレドは日々の業務における従業員の行動指針になります。クレドの導入、さらに周知徹底させることで経営層だけでなく全社員に共通認識を持たせることができます。

クレドがあることにより、意思決定における行動基準や価値観を、企業と個人が共有できるようになるのです。

早さや臨機応変さが重要とされるビジネスシーンでは、従業員が主体的に行動することを求められます。しかし、従業員それぞれが個々の価値基準に沿って動いてしまったり、判断に迷ってしまっては意味がありません。クレドの周知はこのような事態を防ぎ、さらには企業の価値観に沿った行動が自主的にできる従業員を育成する事ができるのです。

従業員のモチベーションアップ

前述しましたが、クレドは一方的に企業が定め作成するものではありません。従業員一人ひとりの意見が集約され、そしてすり合わされ、作成されます。

そのため、従業員は「企業に属する一員である」という認識を強く持つことができます。

また、クレドは従業員も参加する定例のミーティングなどで議論され、時代や社会の変化、または企業の方向転換など必要があれば、文言の追加や削除も行なうなど、アップグレードされていくものです。

このように従業員が自社のクレドについて議論を交わすことは、「自社をより良くするためにはどうすればよいか」ということを考える重要な機会になります。

よって、クレドの導入は従業員のモチベーションの向上につながるといえます。

コンプライアンスの強化

元々クレドはコンプライアンスの強化・モラル意識の向上の為に開発されたものです。

コンプライアンスとは法令遵守のことですが、それを念頭に置いたクレドを作成し、従業員に周知徹底することで、従業員は正しい倫理観に従いながら業務を行うことができます。

結果として、企業全体でコンプライアンスを遵守した企業活動につながり、知らず知らずにコンプライアンス違反をしてしまう従業員を未然に防ぐことができます。

ゴール・目標の明確化

企業が掲げる企業理念や経営理念は一般的に抽象的である事がほとんどです。

一方クレドはその企業理念をさらに詳しく具体化し、ゴールを達成するための行動の指針が明確化されたわかりやすい文章で書かれたものです。

企業から「どう行動すべきか」という方向性をクレドによって従業員にしっかりと示すことで、全社員が自信を持ち、同じ目標・ゴールに向かって業務に取り組むことができます。

ここで重要なのは、人によって受け取り方が変わってくるような曖昧な表現ではなく、具体的な行動指針を示す必要があるということです。

このようにクレドによってゴールが明確化すると、積極的に業務にあたることができ、成果の向上にもつながるでしょう。

クレド導入時の注意点

経営陣のみで作成しない

経営陣のみでクレドを制作した場合、理想ばかりの都合の良い文言ばかりがクレドに盛り込まれてしまう可能性があり、従業員の賛同を得られないままクレドの導入が失敗に終わるおそれがあります。

良いクレドは従業員主体で作成されるべきであり、企業側から従業員に押し付けるようなものでは、全社員への浸透は難しいでしょう。

クレドの作成は全社員へアンケートをとったり、積極的な意見交換を行うなど全社員で取り組むことで、クレドを自分事化して捉えてもらうことが重要なのです。

実現可能な内容にする

作成されたクレドは、実際に企業が行っている事業や取り組み以外は内容に組み込むべきではありません。

理想や目標が高い事は企業としては悪い事ではありませんが、現実離れした内容を盛り込んでしまうと逆効果になり、イメージの悪化や不信感へと繋がってしまう恐れがあります。

理想だけではなく、あくまでも行動に移せる範囲の目標や実際に行っている事業などを元にクレドを作成することが重要なのです。

従業員への共有を怠らない

クレドは企業の価値観を全社員に浸透させることが最も重要であるため、共有することを怠ってはいけません。

クレド作成時から従業員と共に行うことはもちろんですが、作って終わりではなく、導入後もポスターでの掲示やカードを常に携帯するなどの施策を行い、クレドの共有・浸透を促す必要があります。

クレドの形骸化を防ぐ

上記でお話した通り、ポスターの掲示やクレドカードなどの施策は浸透させるために重要ですが、これが当たり前になりすぎてしまうと、クレドの形骸化を招く可能性があります。

従業員がクレドに触れたり目にする機会を増やすことはもちろん大切ですが、ただ掲載して終わりではなく、それ以外にも評価制度を取り入れたり実際の行動事例を全社員に共有するなどの施策も取り入れ浸透を段階的に行っていくことが重要です。

最終的にはPDCAを回して従業員への浸透策は間違っていないか、浸透度はどのくらいなのかなど全体的な改善を行っていくことで、クレドの形骸化を防ぎより効率的に浸透を促すことができるでしょう。

クレド導入の事例

ジョンソン・エンド・ジョンソン

記事の最初にも記載しましたが、クレドはジョンソン・エンド・ジョンソンから広まったとされています。

ジョンソン・エンド・ジョンソンには「Our Credo」があり、「顧客」「社員」「地域社会」「株主」の4つに対して果たすべき責任が記載されています。

このクレドは1943年に公表されてから70年以上の年月を経て、時代の変化に沿って4度の変更を行いつつも、現在まで従業員の行動基準として引き継がれてきました。

このクレドが真価を発揮し、世界的に注目が集まったのは1982年に起こった「タイレノール事件」でした。

タイレノール事件とは、当時のジョンソン・エンド・ジョンソンが出していた頭痛薬に毒物が混入しており、7名の死者が出たというものです。

その毒物はどの時点で混入してしまったのか、そしてそれは第三者によって意図的にされたものなのか事故なのか、何もわからなかったといいます。

ですが当時のCEOは責任逃れをすることなく、アメリカ全土に頭痛薬を服用しないよう警告を出し、商品をすべて自主回収しました。

回収時にはメディアを通して徹底的な情報公開を行い、重要な情報を包み隠さず発信し続けました。

この事件がきっかけとなり、ジョンソン・エンド・ジョンソンは異物混入が不可能な特殊な形状のパッケージを開発し、それは業界のスタンダードとして今も活躍しています。

このような迅速な対応は後に「ビジネス史上最も優れた危機対応」と称されるようになりました。

第一に企業や商品のことではなく顧客を第一に考えた対応にいち早く至ったのは「Our Credo」に記された行動指針あってこそでした。

常に何を優先して行動するのか、このような明確な指針が全社員に浸透していることは企業として大きな強みといえるでしょう。

リッツカールトン

リッツカールトンはマリオット・インターナショナルが創業する有名なホテルチェーンであり、「ゴールド・スタンダード」という企業理念を含むクレドを設定し、従業員全員が徹底して実践しています。

リッツカールトンはこのクレドを従業員へ浸透させるための取り組みを行っています。

入社後のオリエンテーションからこのゴールド・スタンダードの内容を説明し従業員に浸透を求め、実際に働く際、従業員は全員ゴールド・スタンダードが書かれたカードを持ち歩き、業務中いつでも見返せるようにしてます。

また、リッツカールトンは従業員一人ひとりに「2000ドルの決裁権」を与えていることで有名です。

これはクレドとして指標が浸透しているからこそ、従業員一人ひとりが責任を持ちながらもお客様に感動体験を与えるため、積極的に自己判断で行動することができるのです。

また、ゴールド・スタンダードについて議論する場も保証されており、自分たちで改善し作り上げていくものだという意識を従業員全員がもっています。

このように、クレドの活用によって社員のモチベーションを上げ、結果としてリッツ・カールトン全体の価値を高めることに成功しているのです。

リッツカールトンのクレドについては書籍化も数多くされておりビジネスモデルとしても知名度を挙げています。

まとめ

企業の価値観や信条をより詳しく、わかりやすく文章化したものえある「クレド」は、全社員の行動指標として重要な役割を果たします。

実際に導入する際は制作時から注意しなければならないこともありますが、クレドの浸透によってインナーブランディングにおいてメリットを発揮します。

社員へ浸透を促すには具体的な文章に落とし込むことが重要です。近年では企業理念や社内ナレッジ、そしてクレドなどをインナーブランディングのために書籍化する企業も増えてきています。本にすることでストーリーと共にさらに詳しく企業について理解を深めてもらえるのです。

インナーブランディングのための書籍化について詳しい記事はこちら↓
経営理念浸透のためには?インナーブランディングに最適な書籍を活用した解決策
社内ナレッジを書籍化 ~インナーブランディングで組織力を強化、新サービスをローンチする~


この記事を読んだ方は他にこんな記事を読んでいます。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

コメント

コメントを残す

*