皆さんは「炭鉱のカナリア」という言葉をご存知でしょうか?カナリアは、周囲の異変にとても敏感で、普段常にさえずっているのに、危険を感じると鳴き止むという習性を持っています。昔、炭鉱労働者は、坑道に入る際に3羽のカナリアを鳥かごに入れて持っていきました。そして、そのうちの1羽でも鳴き止んだら、「炭鉱内にガスの発生等、なんらかの変調が起きている」と察知しました。要は、カナリアは一種の「警報(アラーム)」として使われていたわけですが、これによって、炭鉱労働者は事前に危険を回避することができたのです。
実は、投資の世界にも「炭鉱のカナリア」が存在します。
それはズバリ、「金利」です。
「金利」はまだ表面化していない景気の変調を教えてくれる、まさに投資の世界におけるカナリアなのです。
だから金利のことを知れば、投資の確実性は向上します。投資家にとって、これほど力強い味方はありません。すでに何度か投資で失敗した経験があれば、「金利のことをもっと知っていれば、失敗しなかったのに」と思うはずです。
私は25年超の長きにわたり運用の世界に身を置き、日々金融市場と奮闘してきました。その経験から、景気を反映する金融市場の「炭鉱のカナリア」は、身近にある「金利」であると断言できます。
金利を見れば投資はうまくいく
- 著者:堀井正孝(ほりい・まさたか)
- 定価:1628円(本体1480円+税10%)
- 発行日:2016/1/22
- ISBN:9784844374541
- ページ数:240ページ
- サイズ:188×130(mm)
- 発行:クロスメディア・パブリッシング
- 発売:インプレス
米国の利上げ、中国経済の減速、その他欧州、日本経済のこれからなど、金利がすべてを語っている。
目次
はじめに
「金利」を知れば、投資の確実性は向上する
金融市場における「炭鉱のカナリア」は「金利」である/使いこなすべき金利は、たった3つだけ/すべては米国から始まる/今の投資、そのままでいいですか?
第1章 金利は景気の「今」を表す
2008年の世界金融危機を振り返る
1 リーマンショックは、なぜ起きたのか?
住宅価格が頭打ち/遅れた各国の利下げ時期/米国景気を押し上げたサブプライムローン/リーマンショックで米国に激震/NYダウ史上最大の下落/出遅れた主要先進国/米国発、日経平均株価一時6000円台
2 金利はリーマンショックを知っていた
最初に金利が動いた/金利はやはり「炭鉱のカナリア」だ
上がるのか、下がるのか、知りたいと思いませんか
1 怖いのは下落、避けられないのも下落
2 景気のセンチメントを知る
「経済指標」で景気を判断しようとしていませんか
1 改定される経済指標
2 金利は景気の「今」を表す
第2章 3つの金利で景気は予測できる
1つ目の金利 政策金利(短期金利)
1 中央銀行に支払う金利
2 金融政策とは政策金利の変更
3 日常生活で金融政策を感じる
2つ目の金利 10年国債利回り(長期金利)
1 「債券」とは期間・利率を定めた資金調達の1つ
2 10年国債利回りは10年の基準金利
3つ目の金利 「社債利回り」について
1 社債と国債は発行体の違い
2 同年限で浮き出る信用力の差
3 信用力は企業より国債が上
4 私たちも信用力を使っている
COLUMN 1 ファンドマネージャー(FM)の条件
第3章 景気サイクルと金利の関係
景気には3つのサイクルがある
1 ISM製造業景況指数は50が基準
2 見えてくる3つの景気サイクル
金融政策と信用力が景気を動かす
3 サイクルは10年・5年・2年半
信用サイクル/金融政策サイクル/在庫サイクル
世界は米国に追随する
1 景気サイクルは米国から始まる
2 プラスする各国の事情
金利から景気後退局面を予測する
1 金融政策サイクルには四季がある
2 ポイント1:長期金利は短期金利の先を行く、景気の「バロメーター」
まず動くのは長期金利/短期金利はじっくり慎重派/長期金利は敏感かつ行動派/夏の終わりに逆転現象
3 ポイント2:長短金利差は景気の「先行指標」
長期金利-短期金利=長短金利差/夏の縮小は秋の気配/冬の拡大は春の雪解け/長短金利差は予言者
4 ポイント3:長短金利差がマイナスになったら冬接近
長期金利は寒さに敏感/夏の逆転現象は悪い予感
5 過去のデータで検証~長短金利は本当に景気と関係しているか
長短金利差の方向転換で季節が変わる/夏の悪い予感が的中/長短金利差は景気を知る大きな手がかり
6 長短金利差1%割れは注意、0%割れは警告
長短金利差は景気の道しるべ/見逃すな、1%と0%割れ
COLUMN 2 駆け出しFM時代 その1
第4章 信用サイクル
なぜ10年に1度、世界的金融危機が起こるのか…
1 銀行が融資するか、それが信用サイクル
①リスクオン局面 「喜んで貸します」/②レバレッジ局面 「少し不安、でも貸します」/③リスクオフ局面 「検討しましたが、残念です」/④財務緊縮局面 「元気になったら、また」
2 約10年に1度、景気は地に落ちる
融資の消極化が景気後退を呼ぶ/3つのサイクルが合体して負の威力増強/鍵を握る3つ目の金利
社債スプレッドは信用サイクルを物語る
1 社債利回り-国債利回り=社債スプレッド
2 景気が悪いと社債スプレッドが拡大
社債スプレッドで景気後退を予測する
1 企業財務の健全性(安全性)を測るレバレッジ比率
マンション購入、自己資金とローンはそれぞれいくら?/レバレッジ比率は高いと不安?/株価は見た目、社債スプレッドは性格を表す
2 社債スプレッドでわかる企業の信用力
銀行融資と企業借入は表裏一体/①リスクオン局面 「積極性が強味」/②レバレッジ局面 「見た目に騙されるな、本質を見抜け」/③リスクオフ局面 「メッキがはがれる」/④財務緊縮局面 「生まれ変わる」
3 景気後退のサインは、社債スプレッドの拡大
レバレッジ局面で気づけるか/株価の上昇+社債スプレッドの拡大=危険信号
COLUMN 3 駆け出しFM時代 その2
第5章 お金は世界を回っている
お金(米ドル)は世界を回っている
1 「基軸通貨」と言われる米ドル
2 米ドルは血液
米ドル流動性(ワールド・ダラー=WD)
1 WD=国内ドル+海外ドル
2 WDを分解
国内ドルは金融緩和で膨らむ(=米国マネタリーベース)/海外ドルは米国債に姿を変える(≒世界の米ドル外貨準備高)
米貿易収支が新興国の景気を左右する
1 米貿易収支が米ドルの流れを決める
貿易赤字拡大で、海外ドルが増加/貿易収支に変化~シェール革命で潤うのは米国だけ
2 海外ドルが為替介入で新興国の外貨準備高に
為替介入で米ドルが中央銀行に集合/米ドル頼みの新興国経済
WDから見る新興国経済
1 米国と新興国には時差がある
米国が山頂の時、新興国は谷/米国の好景気がやがて中国の好景気に/過去のデータで検証
2 WDから世界が見えてくる
2つの基本/WDの伸び率(前年比)は景気の現れ/米国はWDで世界経済を牽引できるか
COLUMN 4 FM時代…~海外出張で多くを学ぶ~
第6章 すべては米国から始まる
景気サイクルを予測に活かせ!
1 完璧なんてあり得ない
2 やるべきは、金利の「活用」と予測の「修正」
米国の今を知る
1 金融政策サイクルから見た米国
世界金融危機からの1周目/復活への2周目/最近の天候を考えてみる/今の季節は?
2 信用サイクルから見た米国~本質を見抜けるか
米国の今後を予測する
1 シナリオを描く
2 そのシナリオのその先は?
3 シナリオ1は、金融政策が鍵~10年ぶりの利上げは続くか
10年ぶりに利上げ開始/金利はどこまで上昇するか/材料出尽くしで株価は堅調/長短金利差を追え/サイクルの短期化に注意/米国は引き締め、ユーロ圏・日本は緩和で米ドル高に
4 シナリオ2は、新興国の行方が鍵
金融政策サイクルは3周目に突入か/1990年代後半の新興国/次の危機を招く新興国は?/米ドル高が米国をダメにする時、緩和を決断か
5 シナリオ3 信用スプレッドは盤石か 異例の事態発生
危機では銀行間与信残高が激減/異例の事態回避のために自己資本規制を強化/社債スプレッドの急拡大は異例の事態の前兆/IMFの警告/皮肉にも自己資本規制が異例の事態を招く恐れも
「今」+New、…修正力を研ぎ澄ませ
第7章 ユーロ圏という大国
他に類を見ないユーロ圏事情
1 ユーロの誕生
2 一律の金融政策、バラバラの財政政策
3 差がつく国の信用力
先頭に立つドイツ
1 金融政策は昔も今も米国に追随
2 長短金利差もまた然り
欧州債務危機が勃発
1 一国の危機がユーロ危機へ発展
2 要は、信用サイクル
3 スペインの4つの局面
①リスクオン局面 「ユーロに期待し、スプレッド縮小」/②レバレッジ局面 「借入増加で、ややスプレッド拡大」/③リスクオフ局面 「ソブリンリスクが発覚し、スプレッド急拡大」/④財務緊縮局面 「財政健全化で、信用力が徐々に回復」
4 スペインに見えてきた光と2つの影
財政健全化という光/反緊縮財政という民意の影/カタルーニャ州が更なる影となるか/ポルトガル、君もか。
欧州の今後の行方
1 12年前の日本は今の欧州
2 「欧州の日本化」はあるか?
ドイツ主導の利上げが危機を招く?/2015年12月3日、ECB追加緩和実施/ドラギ総裁は「欧州の日本化」を避けられるか
第8章 追い風に乗る日本
景気循環の歴史から学べること
金融政策サイクルのお国事情
1 黒田日銀総裁による大胆な金融緩和
2 金融政策サイクルの新生児たち
縮小したままの長短金利差/「円高との戦い」との決別
3 放たれ続けるか、黒田バズーカ
順調な信用サイクル
1 申し分ない信用力
積極的な融資姿勢/健全な日本企業/社債スプレッドの縮小
2 IMFのお墨付き
上向きな日本に潜むリスク
1 日銀の出口戦略
テイパリングの開始/過去3回、割高修正で国債急落/次回は米英欧と段違い~日本格下げの恐れ
2 不動産向け融資
不動産が融資の中心/追加規制や法改正の懸念
3 日本の投信フロー
移り変わる投信の人気/国の支えは人気の投信マネー/常に投信人気を追うべき
第9章 投資で成功するために
金利で投資環境を測る
1 意外に難しい「総合的判断」という代物
2 投資環境スコアを作成~自動的に総合的判断
5つの基本データ/実際にスコアを作成
3 ボトムの予測〜投資環境スコアは過去の危機を見破れたのか
季節に合った商品選びの勧め
1 「景気回復=全て上昇」ではない
ピークは順番に訪れる/株式のカテゴリーによる違い
2 商品市況は新興国とタッグを組んでいる
商品指数の下落は、米国にはプラス/豪ドルは新興国経済に連動
3 為替も大事な収益源
基本は米利上げ=円安ドル高、でも1年の猶予あり/米国か他の先進国か?/外債投資は債券のリターンも享受できる
4 季節によって優位に立つ商品がある
投資の心得
1 金利は有効な景気判断ツールである〜売買ではなく、「使う」
2 全ては循環する~軸をぶらすな
おわりに