もはや「ロジックの積み重ね」だけでは社会が行き詰まり、
将来も不安で、モノが売れず、人も育たない……。
そんな答えのない時代に最重要な「問う力」を育むヒントとして、
東京藝術大学の美術学部を取り上げたのが本書です。
▼ とことんまで「自ら考える」ことを実践する唯一無二の存在
ダニエル・ピンクが「MFA is New MBA」と題した論文を発表したのは2004年。
いま欧米だけでなく日本でも、若手のビジネスパーソンの間で、MBAのように
「MFA(Master of Fine Arts=美術学修士)」への注目が高まっているといいます。
稀少価値があり、かつ現代のビジネスにおいては、
その専門性を活かしてハイパフォーマンスを発揮できるため、
高額なギャランティをもって迎えられることも多々あります。
アートを学ぶことは、言い換えれば「自分ごと化」を突き詰めることであり、
とことんまで「自ら考える」ことが基本になります。
だからこそ、行き詰まりを打破する力を持ちます。
そして、まさにそれを実践している唯一無二の学び舎が、東京藝大美術学部なのです。
通常は似たような偏差値の「似たような学力・思考様式の人々」が集う日本の大学の中で、
同大学の美術学部は特異な存在です。1浪・2浪は当たり前で、40代・50代の学生も見られます。
偏差値でいえば40台から70台までが一堂に会し、競争倍率も日本の大学の平均を大きく上回っています。
入試においても「この学生の思考力・表現力はどのくらいで、どこまで伸びそうか」を見定め、
学生一人ひとりが個性的でユニークな同学部は、「究極のダイバーシティの教材」ともいうべき存在。
社会やビジネスを考える上でも、これからの最重要項目の一つともいえる「多様性」を尊びつつ、
徹底的に思考力を育み、いまや多くの企業も熱い視線を注ぐ同学部の「ユニークさの源泉」は
どこにあるのでしょうか。
「アート」と「ビジネス」の接点を追究してきた著者が、東京藝大美術学部の数多くの卒業生や
現役学生・教員などにインタビューを行いつつ、その秘密に迫るのが本書です。