・日本経済新聞朝刊 (2022年5月21日付)「読書」欄 書評掲載
・週刊東洋経済 (2022年5月28日号)「話題の本 今週のもう1冊」欄 書評掲載
・LEON (2022年6月号)「LEON JOURNAL」欄 書評掲載
・日経ビジネス (2022年6月13日号)「編集部のお薦め」欄 書評掲載
・NewsPicks (2022年6月17日・18日)「The Prophet」特集欄 書籍紹介/中野香織氏インタビュー掲載 など
▼ いま人を動かすのは、「テクノロジー」ではなく「人文知」だ。
これから2030年にかけて、世界・経済・ビジネスなどを考える上で重要になるであろう考え方の一つとして、本書で取り上げるのが「ラグジュアリー」です。
一般的に「ラグジュアリー」といえば、19世紀フランスからの歴史・伝統を持つ、いわゆる高級ブランド企業のあり方などがイメージされるかもしれません。
実際、それを研究するために、これまでヨーロッパを中心として、大学やビジネススクールでも「ラグジュアリーマネジメント」を学ぶコースが設置されてきました。
それらの先進的なコースや、スタートアップなどを含めた感度の高い企業がいま注目するのは、旧来のラグジュアリーとは一線を画した考え方、いわば21世紀の「新しいラグジュアリー」です。
本書でいう新しいラグジュアリーは、たとえば「文化の創造を伴うソーシャルイノベーション(新しい文化をつくることによって社会問題を解決する取り組み)」といえるでしょう。
これまでのモノづくり・サービスづくりや顧客体験は、ウェブ技術をはじめとするコンピュータサイエンス、あるいは機械・材料・加工技術のような「テクノロジー」が引っ張ってきました。
ただ、先進国を中心に技術や市場が成熟をみせる中で、今後、人々の心を動かすような「本当にほしいもの」は、テクノロジーが基礎にありつつも、歴史や文学、地理、哲学、倫理など「人文的な知識」がより主導しながらつくっていく時代になるのです。
その実践例の一つとして挙げられるのは、イタリアのウンブリア州にある小さな村・ソロメオを本拠に、地域の歴史と文化に根ざしたモノづくりを行い、創業50年も経っていないにもかかわらず「世界最高の品質」といわれ尊敬されるブルネロ・クチネリです。
「文化の創造が結果的に利益の源泉となっていく」という考え方と、クチネリをはじめとした実践の動きを、「旧来のラグジュアリーとの対比」「意味の創造」「教育」「文化盗用」「サステナビリティ」など多様な切り口から一冊にまとめるのが本書。
10の視点で「新しい世界」を読み解きます。