出版実績

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マネジメントの本
新・ラグジュアリー 文化が生み出す経済 10の講義

新・ラグジュアリー 文化が生み出す経済 10の講義

  • 著者:安西洋之/中野香織
  • 定価:2,068円(本体1,880円+税10%)
  • 発行日:2022/4/1
  • ISBN:9784295406631
  • ページ数:320ページ
  • サイズ:188×130(mm)
  • 発行:クロスメディア・パブリッシング
  • 発売:インプレス

各紙誌の書評欄に多数掲載!
「オリジナリティとセンスで勝負しようと考える人々への示唆となるだろう」「この変化を理解することが、これから先の変化を読み解く鍵となる」「ポジティブな風を感じられる」など絶賛の声

・日本経済新聞朝刊 (2022年5月21日付)「読書」欄 書評掲載
・週刊東洋経済 (2022年5月28日号)「話題の本 今週のもう1冊」欄 書評掲載
・LEON (2022年6月号)「LEON JOURNAL」欄 書評掲載
・日経ビジネス (2022年6月13日号)「編集部のお薦め」欄 書評掲載
・NewsPicks (2022年6月17日・18日)「The Prophet」特集欄 書籍紹介/中野香織氏インタビュー掲載  など

▼ いま人を動かすのは、「テクノロジー」ではなく「人文知」だ。

これから2030年にかけて、世界・経済・ビジネスなどを考える上で重要になるであろう考え方の一つとして、本書で取り上げるのが「ラグジュアリー」です。

一般的に「ラグジュアリー」といえば、19世紀フランスからの歴史・伝統を持つ、いわゆる高級ブランド企業のあり方などがイメージされるかもしれません。
実際、それを研究するために、これまでヨーロッパを中心として、大学やビジネススクールでも「ラグジュアリーマネジメント」を学ぶコースが設置されてきました。

それらの先進的なコースや、スタートアップなどを含めた感度の高い企業がいま注目するのは、旧来のラグジュアリーとは一線を画した考え方、いわば21世紀の「新しいラグジュアリー」です。
本書でいう新しいラグジュアリーは、たとえば「文化の創造を伴うソーシャルイノベーション(新しい文化をつくることによって社会問題を解決する取り組み)」といえるでしょう。

これまでのモノづくり・サービスづくりや顧客体験は、ウェブ技術をはじめとするコンピュータサイエンス、あるいは機械・材料・加工技術のような「テクノロジー」が引っ張ってきました。
ただ、先進国を中心に技術や市場が成熟をみせる中で、今後、人々の心を動かすような「本当にほしいもの」は、テクノロジーが基礎にありつつも、歴史や文学、地理、哲学、倫理など「人文的な知識」がより主導しながらつくっていく時代になるのです。

その実践例の一つとして挙げられるのは、イタリアのウンブリア州にある小さな村・ソロメオを本拠に、地域の歴史と文化に根ざしたモノづくりを行い、創業50年も経っていないにもかかわらず「世界最高の品質」といわれ尊敬されるブルネロ・クチネリです。

「文化の創造が結果的に利益の源泉となっていく」という考え方と、クチネリをはじめとした実践の動きを、「旧来のラグジュアリーとの対比」「意味の創造」「教育」「文化盗用」「サステナビリティ」など多様な切り口から一冊にまとめるのが本書。
10の視点で「新しい世界」を読み解きます。

著者紹介

安西洋之/中野香織

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
モバイルクルーズ株式会社代表取締役/De-Tales Ltd.ディレクター。東京とミラノを拠点とした「ビジネス+文化」のデザイナー。欧州とアジアの企業間提携の提案、商品企画や販売戦略等に多数参画してきた。デザイン分野との関わりも深い。2017年、ロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』(日経BP)を監修して以降、「意味のイノベーション」のエヴァンジェリストとして活動する中で、現在はソーシャル・イノベーションの観点からラグジュアリーの新しい意味を探索中。またデザイン文化につい てもリサーチ中である。著書に『メイド・イン・イタリーはなぜ強いのか』(晶文社)など。訳書にエツィオ・マンズィーニ『日々の政治』(BNN)がある。

中野香織(なかの・かおり)
著述家/株式会社Kaori Nakano 代表取締役。イギリス文化を起点とし、ダンディズム史、ファッション史、モード事情、ラグジュアリー領域へと研究範囲を広げてきた。日本経済新聞など数媒体で連載を持つほか、企業のアドバイザーを務める。著書『「イノベーター」で読むアパレル全史』(日本実業出版社)、『ロイヤルスタイル 英国王室ファッション史』(吉川弘文館)、『モードとエロスと資本』(集英社新書)ほか多数。東京大学大学院博士課程単位取得満期退学。英ケンブリッジ大学客員研究員、明治大学特任教授、昭和女子大学客員教授などを務めた。

www.kaori-nakano.com

目次

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はじめに

 

第1講 「新しいラグジュアリー」の時代は静かに始まっている

ラグジュアリーは人文学発のビジネス
「文化をつくる」ことの王道と、それを教えるコース
ラグジュアリーの意味が変化している
変化が起きている理由
それぞれの地域のローカル文化がつくるラグジュアリー

 

第2講 「旧型」のラグジュアリー

Luxuryの源、光と豊かさと誘惑
ラグジュアリーを必要としてきたのは、誰?
エロスと手を携えて資本主義経済を回す
知的で秘儀的な存在への変容
20世紀ファッション史は、「ラグジュアリーの意味の更新」の歴史
マーケティング用語で語られる、「戦略」としてのラグジュアリー
ラグジュアリーとラグジュアリーブランドを分けて考えよう
カトリックに反発するプロテスタント
Luxuryの反対語は何か?

 

第3講 新しいラグジュアリーと「意味の創造」

新しいラグジュアリー市場の創造へと舵を切る
ラグジュアリーマネジメントを学ぶ人たちの動機に変化が
新しい方向を探っているリサーチャー
文化をつくるラグジュアリーへのアプローチ
今、現場が考えている方向とは
職人文化の再評価が物語ること
アーツ・アンド・クラフツにヒントがあるはず
「人の手が入らないラグジュアリーはありえない」

 

第4講 ラグジュアリーとロマン主義

人間らしさを尊重するロマン主義
「美」をはるかに超える、恐怖を乗り越えた先にある歓喜の「崇高」
ギロチンへの反発が『レ・ミゼラブル』を生んだ
ラファエル前派、ラスキン、モリス、そしてクチネリへの系譜
エレガンスとは抵抗である
21世紀のロマン主義的抵抗―「本物」の美しさの時代へ
本物と偽物
「偽物」がアートに転じるとき
シャネルが生んだ「偽物」ムーブメントとミキモト
コピーされることは本物の証?

 

第5講 日本のラグジュアリー

日本のラグジュアリーの「始祖」マツダとサンモトヤマ、秦ヴィトン
日本におけるイメージを決定づけたラグジュアリーメディア
「ラグジュアリー・コミュニティ」の日本ルール
植民地の民も、植民地の協力者も、やめてしまおう
日本発ラグジュアリーのために
ラグジュアリースタートアップの萌芽
地域の幸福を考えながら、本質的に魅力のある製品をつくる
マメ・クロゴウチのローカリティは解像度高く

 

鼎談 最先端から見える「ラグジュアリー」の向かう場所

日本のファッションはラグジュアリーとして認知されるか?
「ヨーロッパ中心」から脱皮しつつある中でLVMHが狙うのは?
文化的リテラシーの向上が鍵
新しいラグジュアリーがフランス以外で勃興
ファッションが伝えるメッセージが変化しつつある

 

第6講 「ラグジュアリーマネジメント」が教えるもの

ラグジュアリーはいつからアカデミックな研究対象になったのか?
「歴史」と「国際比較」から教える
ラグジュアリーマネジメントのコースの中身は?
英国の人文・デザイン系の教育が強調する点
新興国における教育はどうなっているか

 

第7講 文化盗用 ―文化的な植民地からの解放

奴隷制の歴史を掘り起こす
「文化の盗用」という言葉がなぜ注目されるのか
「異文化要素の適用」か、「異文化の盗用」か
異文化への「感度」が課題
異文化交流の国のファッション企業
どうすれば文化の盗用トラブルを減らせるのか?

 

第8講 「アート」が持つ意味

ハイエンド企業とアート
アートと付き合う動機を突っ込んでみる
実はコンテンポラリーアートでは、フランスは遅れをとっている
いくつかの層に分かれる「アートの時代」
クチネリのユニバーサル図書館構想にある長期的視点
ラグジュアリースタートアップが注目すべきユネスコ無形文化遺産

 

第9講 サステナビリティをラグジュアリーから見る

ショパン国際コンクールで優勝者が使ったサステナブルなピアノ
地域によって異なる動機
ラグジュアリー文脈でのサステナビリティとは?
サステナビリティが指し示す範囲とビジネス寄りにある米国
スタートアップもサステナブルを起点とする
倫理と人間性が問われている
ラスキンの経済・人間観

 

第10講 もうひとつのあり方、もうひとつの視点

旧型ラグジュアリーも、変化している
「意識の深い」ラグジュアリー
19世紀の「意識」、21世紀の「意識」
一見、無駄なラグジュアリーが社会にもたらす価値
合理的な目的から解放されたラグジュアリーとしての宇宙ビジネス
「もうひとつのあり方」を導く宇宙視点主義
科学技術が発達すればするほど問われていく「人間らしさ」

 

おわりに―「科学と心の融合」の時代における人文学の復権

参考文献