肩が凝る、腰が痛い、疲れが抜けない。
集中力が持続しない、元気がない、いつも不安……。
挙げればキリがない心身の不調。
私のところには日々、体調を崩し、不調に悩む方々が多く来院されています。
症状のレベルはさまざまですが、そのほとんどの人たちに共通している深い問題には、「呼吸」にあります。
呼吸とは、単に「息を吸う・吐く」ということだけではありません。
呼吸は、筋肉や関節、内臓や免疫、循環、体と心のすべてに対して根本的な要素として関わってくるのです。
かくいう私も20代前半までは不調だらけでした。
13歳のときにクローン病という腸の難病(特定疾患)を患い、チック症、自損、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・腰椎椎間板ヘルニア、両股関節骨折、関節の炎症や変形など心身に関わる病気を数多く経験してきました。
そんなときに、あることに気づきます。
ある呼吸の仕方をしていると、苦痛が和らぐということです。
さまざまな治療法や健康法で結果が出なかったこともあり、もう病気を治すとか治さないではなく、「自分がいかに楽にいられるか?」という視点に立って、徹底的にその呼吸の仕方で毎日を過ごすようにしました。
これが呼吸を整えるという作業です。
呼吸を整えて過ごすと、あれだけ酷かった症状は1年も経たないうちにほとんどなくなってしまったのです。それ以来、今に至るまで15年以上、症状は出ていません。
症状が改善しただけではありません。集中力や体力、疲れにくさなど仕事のパフォーマンスも上がりました。1日15時間働いても次の日に疲労が残らない。そんなことも起こったのです。
1日1回の「静」の時間として呼吸法を取り入れ、それを基準に1日3万回とも言われるふだんの呼吸を整えていく。
それが本書の内容です。
自分の心身すべてに関わる呼吸。
それは、いってしまえば、自分自身そのもの。
呼吸を整え、ケアするということは、「ふだんの自分をいかに洗練させていくか?」というテーマにもつながっていきます。
最終的には、特段何も意識せずとも、呼吸を整えている状態が〝当たり前〟の状態になります。「ただ在る」というだけで「なにもしなくても」呼吸を整えていられる自分になるということです。
どんなに健康知識を学ぶよりも、100種類の健康法を実践するよりも、
「あっ、このままいくと体がヤバい」
という感覚(体の声)をどこまで繊細に身につけられるか、その上で、この声に嘘つかずに生活できるか、ということ以上に、大事なことはありません。
その感覚を知るのに、最も使えるツールの一つが「呼吸」なのです。
本書は、人間が持つ普遍的な課題を、呼吸という視点から明らかにしていくとともに、「ではどうすればいいのか?」という具体的な方法や考え方の紹介を通して、「自分を知る」ということの一助になればと思います。