国内外で拡大し続ける巨大マーケットを「魚ビジネス」のカリスマが徹底解説!
●5億円マグロはなぜ5億円なのか?
2026年1月5日、豊洲市場の初セリで青森県大間産の本マグロが1本5億1030万円という驚異的な価格で競り落とされました。寿司ネタになる魚1匹の値段として、世界最高額と言ってよい金額です。大間産の本マグロは、津軽海峡という世界有数の好漁場で、一本釣り、または釣り糸を長い縄に何本も付けた延縄(はえなわ)によって漁獲されます。魚自体は荒波の中で鍛えられ、脂の乗りと身質の良さは別格です。大量に獲れる魚ではなく、希少性、品質、物語性、そのすべてが重なった魚です。
しかし、このマグロは高価格で提供されたわけではありません。すしざんまいの築地本店で、来店客に「赤身398円」「中トロ498円」「大トロ598円」という通常価格で振る舞われました。5億円マグロは、一部の人の贅沢品ではなく、多くの人に「夢」として共有されたのです。
●寿司ロボットから細胞魚肉まで
「職人がいなければ美味しい寿司は作れない」――かつての常識は、高度な機械と計算し尽くされた科学の力によって書き換えられつつあります。
1981年にその原型が誕生した寿司ロボットは、今や毎時4800貫を生産できる性能に達するものも現れ、世界90カ国以上の厨房で稼働しています。回転寿司では、AI需要予測システムが「どのネタを、いつ、どれだけ流すか」を指示し、マグロの目利きすらAIが担うようになりました。
2025年5月には、世界初の培養サーモンがアメリカのレストランで提供されました。細胞培養によってつくられた「培養魚肉」は、寿司ネタとしての利用も意識されています。脂の多い部分だけ、赤身だけといった形で規格をそろえやすく、安定供給にも向いています。
●「おまかせ」に込められた日本文化――寿司が体験として成立する理由
海外の人々が寿司に強い印象を受ける理由は、味だけではありません。「静かな空間だった」「時間の流れ方が違った」「職人との距離が印象的だった」――こうした声は、寿司が単なる食事ではなく、総合的な「体験」として受け取られていることを示しています。
寿司店でよく耳にする「おまかせ」という言葉は、海外の人々にとって最も理解が難しい概念の一つかもしれません。直訳すれば「I leave it to you」ですが、その意味合いは単なるメニュー選択の放棄ではありません。「おまかせ」とは、寿司の価値を最大化するための、日本独特の文化的な仕組みなのです。
本書では、「おもてなし」や「おまかせ」といった日本文化が、寿司という食体験にどのように組み込まれているのかについても解き明かします。
▼こんな方におすすめ
・寿司や水産業界で働いている方、これから働きたい方
・飲食ビジネスに興味のある経営者・起業家
・日本の食文化を深く理解したいインバウンド関係者
・寿司が好きで、もっと寿司を楽しみたい方
・食のサステナビリティに関心のある方