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自社で本を出版する方法|自費出版と企業出版の違い・費用・選び方

オウンドメディアやSNS、Web広告など、企業がメッセージを発信する手段は増え続けています。しかし、情報が溢れる時代だからこそ、企業が自社の価値や専門性を伝えるうえで、「信頼性」と「体系性」を備えたメディアの価値が見直されています。その代表格が「書籍」です。
本という形式には、編集者や出版社による第三者のチェックが入ることで生まれる客観性と、一冊を通じて物事を論理的に伝えきる構造があります。自社の事業や考え方、培ってきたノウハウを「一つの作品」として世に問うことができるのは、他のメディアにはない特徴といえるでしょう。
本記事では、企業が自社で本を出版する際の選択肢を整理し、それぞれの方法の違い、メリット・デメリット、費用や期間の目安、そして成功に導くためのパートナー選びまで、実務的な視点で解説していきます。
自社で本を出す主な目的
企業が出版に取り組む主な目的は以下の通りです。
・ブランディング
業界における存在感や独自性を示し、「○○領域ならこの会社」という認知をつくる。
・営業活動の支援
書籍を資料や名刺代わりに活用し、商談前の信頼形成や、サービス内容の事前理解を促す。
・リード獲得
書籍に触れた読者が自社のWebサイトやセミナーへ流入するきっかけをつくり、見込み顧客との接点を増やす。
・採用強化
企業文化や働き方、ビジョンを体系的に伝えることで、共感する人材との出会いを創出する。
・企業文化の言語化と浸透
社内外に向けて、自社が大切にしている価値観や行動指針を明文化し、共通認識を醸成する。
・経営思想の発信
経営者や役員の考え方を整理し、ステークホルダーや後継者、社会に対して発信する。
・専門性の可視化
その領域における知見や実績を書籍という形で示すことで、専門家としてのポジションを確立する。
目的が曖昧なまま出版に進むと、完成後に「どう活用すればいいかわからない」という事態に陥りがちです。まずは自社にとって何を達成したいのかを明確にすることが、出版成功の第一歩です。
企業が選べる出版方法は実質2つ
「商業出版」「企業出版」「自費出版」という3つの言葉がありますが、企業のマーケティング施策として検討する場合、まずその前提を整理する必要があります 。
「商業出版」は企業が選べる施策ではない
商業出版とは、出版社が主体となり、「一般市場で売れる本をつくる」ために企画・編集・流通を行う出版形態です。著者や企業の意向ではなく、出版社の収益判断が最優先されます。書籍のテーマ、内容、タイトル、発売時期に至るまで、出版社がコントロールし、企業側に決定権はありません。
企業が「自社のブランディングや採用のために本を出したい」と考えて出版社にアプローチしても、企業のPR・宣伝色が強い企画は商業出版として採択されることはほぼありません。出版社は慈善事業ではなく、確実に売れる見込みがなければ企業のオファーに応じることはないからです。
出版の歴史の中で、企業が自社の創業の想いや事業理念、未来への提言を発信したいというニーズに応えるために生まれたのが「企業出版(自費出版)」という形態です。企業出版は、商業出版の代替ではなく、企業のPR・コミュニケーション施策として独自に設計された出版形式です。
つまり、企業が「施策として選べる出版」は、企業出版と自費出版の2択です。
出版ルートの比較一覧
| 項目 | 商業出版 | 企業出版 | 自費出版 |
|---|---|---|---|
| 実現の可能性 | 低い(出版社の企画・選考次第) | 高い(企業が発注可能) | 高い |
| 主な目的 | 書籍の売上最大化 | 経営課題の解決(販促・採用・ブランディング等) | 用途が明確な配布(社内/周年/採用/既存顧客向け等) |
| 企画・内容のコントロール | 低い(出版社主導) | 高い(目的・読者から設計) | 高い(自由度は高いが設計責任は自社) |
| タイミング調整 | 難しい | しやすい | しやすい |
| 書店流通 | あり | あり(戦略的配本) | 可能だが難易度が高い |
| 信頼性 | 高い | 高い(出版社により、商業出版と同等の編集・制作) | 低い傾向(第三者性を担保しづらい) |
| マーケティング施策としての相性 | 低い | 非常に高い(目的・導線・KPIから設計しやすい) | 中~低(用途が明確なら強いが活用設計が鍵) |
※商業出版は比較のために掲載しています。企業が自社のタイミングや目的を優先して実行できる「戦略的施策」としては、企業出版または自費出版が主な選択肢となります。
① 企業出版のメリット・デメリット
企業出版とは、企業がコストを負担し、出版社・編集プロダクションと連携しながら、自社の経営目的に沿った書籍を制作・流通させる出版形態です。ブランディング、営業支援、採用強化、専門性の可視化など、企業側の戦略に基づいて内容・構成・デザインを設計できます。
メリット
・目的に沿った企画設計が可能
自社の経営課題に合わせた内容・構成・デザインを実現できます。
・プロの編集・制作サポート
編集者、ライター、デザイナー、流通担当など、出版社のリソースを活用しながら、高いクオリティで仕上げられます。
・書店流通による信頼性の担保
一般書店での取り扱いが可能なため、第三者性を保ちながら幅広い読者にリーチできます。
・多目的な活用が前提
営業ツール、セミナー配布物、採用説明会での資料など、出版後の活用設計まで含めて企画を組み立てられます。
デメリット
・出版社の選定が成果を左右
編集力や業界理解度、流通ネットワークの有無によって、完成度や販売実績に大きな差が生まれます。
・短期的ROIを求めると失敗しやすい
書籍売上のみで収益回収を期待すると、期待値とのギャップが生じます。営業・広報・採用と組み合わせて効果を測り、「中長期的な信頼を形成する資産」として捉える視点が必要です。
企業出版は「企業の経営目的」を最優先に設計できる出版です。自社のメッセージを体系化し、営業・採用・ブランディングなど複数の目的に横断的に活用したい場合に適した方法といえます。
② 自費出版のメリット・デメリット
自費出版とは、企業が費用を全額負担し、内容・デザイン・部数・配布方法を自由に決めて制作する出版形態です。社史、記念誌、社内研修資料、限定配布用の読み物など、配布先や用途が明確な場合に向いています。
メリット
・完全な自由度
内容、デザイン、部数、配布方法まで、すべて企業側で決定できます。
・スピード重視の制作が可能
編集プロセスを簡略化できるため、急ぎの案件や周年記念など納期が決まっているプロジェクトに対応しやすくなります。
デメリット
・書店流通のハードルが高い
一般的な書店流通は、取次経由の手配や取引条件の調整、返品・精算対応などが必要になり、難易度が高めです。
・第三者性の欠如
編集者や出版社の審査を経ないため、客観性が担保されにくく、外部向けの信頼構築には不向きです。
・ブランディング効果の限界
「自社で作った冊子」という印象が強く、営業や採用といった戦略的活用には向かない場合があります。
自費出版は「限定的な用途・内部目的」に適した出版です。
自社で本を出す効果と注意点
得られる効果
・知見の体系化
日々の業務で培ってきたノウハウや考え方を、一冊の本として整理することで、再現性のある知的資産へと昇華できます。
・長期的な信頼資産の形成
一度出版された書籍は、数年にわたって営業ツールや採用資料として機能し続けます。Web記事やSNS投稿とは異なる持続性があります。
・社内外への影響力
経営層や専門家が執筆に関わることで、社員のエンゲージメント向上や、業界内でのポジション確立につながります。
陥りがちな失敗
・目的設計の不足
「とりあえず出版する」という姿勢では、完成後に使い道が見えず、在庫を抱えるだけの結果になりかねません。
・活用計画の欠如
出版がゴールになってしまい、営業現場や採用活動で活かされないまま終わるケースが少なくありません。
・読者視点の欠落
自社の言いたいことだけを詰め込むと、読者にとって価値のない内容になり、手に取ってもらえません。
出版の成否は、「何のために作るか」「誰に読んでもらうか」「どう活用するか」を事前に明確にできるかで決まります。
費用と期間の目安
【企業出版】
費用: 200万円〜1000万円程度
内訳: 企画・編集費、ライティング費、デザイン費、印刷費、流通・書店配本費、PR費用など
期間: 4ヶ月〜12ヶ月
企画のボリュームや著者取材の回数、デザインの複雑さによって変動します。書店流通を伴う場合、取次との調整や配本準備に時間がかかることも考慮が必要です。
【自費出版】
費用: 50万円〜300万円程度
内訳: 編集・校正費、デザイン費、印刷費(部数により変動)
期間: 2ヶ月〜6ヶ月
書店流通を行わず、編集工程を簡略化する場合は、比較的短期間・低予算で完成させることが可能です。ただし、外部向けの信頼性を担保したい場合は、編集者やデザイナーへの投資が重要になります。
失敗しないための出版社の選び方
・編集力と企画力
単なる原稿整理ではなく、読者視点での構成の提案や、著者の思考を引き出すインタビュー力があるか。実際の編集実績や担当編集者との面談を通じて見極めましょう。
・ビジネス書・実務書の制作実績
企業出版では、業界特有の文脈や専門用語を理解し、読みやすく再構成できる経験が不可欠です。過去の出版物等を確認することが大切です。
・制作スピードと進行管理
経営層や現場責任者の時間を確保しながら進めるには、明確なスケジュール管理と柔軟な調整力が求められます。
・書店流通の実績とネットワーク
自社で取次・流通の手配体制があるか、配本実績がどの程度あるかは、書籍の露出度に直結します。
・出版後の活用支援体制
書籍を営業やマーケティングにどう組み込むか、セミナーやプレスリリースとの連動をどう設計するかまで、提案・サポートできるかが重要です。
注意したいポイント
・実績が不透明、または極端に安価な提案
・企画内容よりも契約を急かす姿勢
・編集者やライターの質に関する説明がない
・出版後の活用方法について言及がない
信頼できるパートナーを選ぶことが、出版の成否を大きく左右します。
まとめ
自社で本を出版する際にまず押さえておくべきことは、「商業出版は企業が主体的に選べる施策ではない」という点です。商業出版は出版社の収益判断によって決まるものであり、企業のPR・ブランディング目的では採択されることがほぼありません。
企業が戦略的に選択できる出版は、企業出版と自費出版の2択です。外部向けの信頼形成や営業・採用への活用を目指すなら企業出版、社内配布や記念誌など限定用途であれば自費出版が適しています。
どの方法を選んでも、出版後の活用設計がなければ成果は生まれません。営業ツールや採用活動、セミナー展開など、具体的な活用とセットで企画することが重要です。自社の知見や事業を体系的に発信し、中長期的な信頼資産を築きたい方は、まず目的の明確化から始めてみてください。
私たちは、企業のブランディングと成長を支援する企業出版を多数手がけています。企画段階からのご相談も歓迎しています。
私たちは企業出版で、ビジネスのお悩みや課題を解決する支援を行っております。
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FAQ(よくある質問)
A. 目的(営業・採用・ブランディング・社内浸透など)と、読者(誰に読ませたいか)です。この2つで最適な出版方法が決まります。
A. 可能ですが、ISBNの取得や流通手配などが必要で難易度は上がります。確実に書店流通させたい場合は、流通体制のある出版社と進める方法が現実的です。
A. 書籍の売上だけでなく、営業効率の向上、採用強化、ブランディングといった効果を含めて評価するのが一般的です。営業資料としての活用や、商談前の信頼形成、採用時のミスマッチ防止などに寄与することで、中長期的に十分な投資対効果が期待できます。

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