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商業出版とは?仕組み・流れ・費用と印税・誤解を編集者が解説

日本の出版業界における「商業出版の全体像」を、出版社の実務的視点、市場データ、著者選定基準に基づいて解説します。本稿は、株式会社クロスメディア・パブリッシング 執行役員/編集長の川辺秀美が執筆しました。

商業出版とは、出版社が製作費用・流通・マーケティングを全額負担し、「広く売れる本」を実現するビジネスモデルです。著者にとって費用負担がない一方で、出版社の厳格な審査を通す必要があり、実現難易度は高いものの、一度実現すれば全国の書店流通と著者のブランディングというメリットが得られます。

しかし、コロナ明けの2023年以降、とくにビジネス書は新刊でのベストセラー率は低く、2025年の最新の日販によるビジネス書ベストセラーも、新刊比率(2024年発行)は50%で、残り50%は2023年度以前のものになっています。このことは、読者が限定されていることを示唆し、書店で評判になっている書籍を買いたいという、リスク回避傾向が読者に見てとれます。

順位書名著者出版社発行年月
1改訂版 本当の自由を手に入れる お金の大学両@リベ大学長朝日新聞出版2024年11月
2頭のいい人が話す前に考えていること安達裕哉ダイヤモンド社2023年4月
3人生は「気分」が10割キム・ダスル 岡崎暢子ダイヤモンド社2024年3月
4嫌われる勇気岸見一郎 古賀史健ダイヤモンド社2013年12月
5DIE WITH ZEROビル・パーキンス 児島修ダイヤモンド社2020年9月
6世界の一流は「休日」に何をしているのか越川慎司クロスメディア・パブリッシング2024年11月
7コンサル時代に教わった 仕事ができる人の当たり前西原亮ダイヤモンド社2024年11月
8覚悟の磨き方 超訳 吉田松陰池田貴将サンクチュアリ出版2013年6月
9移動する人はうまくいく長倉顕太すばる舎2024年4月
10人は話し方が9割永松茂久すばる舎2019年9月

出所:日販2025年上半期ビジネス書ベスト10

商業出版とは?(定義/目的・到達イメージ)

商業出版は、出版社が企画から印刷製本、流通、マーケティングに至る全ての費用を負担し、著者に費用負担を求めない代わりに、売上から一定の印税(通常2~13%程度。※企画・著者によって大きく変わる。例えば、料理本など、オールカラーで撮影など製作費が大きな負担になるものは印税率が低い傾向がある。一方で、大物作家などで予め初版が10万部を超える大作については印税率が高い傾向がある)を著者に支払う出版形式です。

出版社が費用を負担する理由は、「その本が売れる」と判断した場合に限定されます。つまり、出版社が市場ニーズを読み取り、ベストセラーになる可能性を見出さない限り、商業出版は実現しません。また、企画自体にリスクがあり、著者と出版社の信頼関係がある場合は、一部著者が費用を負担する、または印税率を下げて出版するなどの場合もあります。

商業出版の目的・到達イメージ

商業出版が実現することで、著者が得られるものは以下の通りです:

1. 全国書店での流通:紀伊國屋書店、丸善ジュンク、TSUTAYAなどの全国チェーン店に配本
2. Amazon、楽天ブックスなどのオンライン書店での販売:日本国内の主要オンラインプラットフォームでの販売
3. 図書館への納入:全国の公立図書館に配置される可能性(テーマによる)
4. 著者ブランディング:出版社の信用度が著者に付与される
5. メディア露出の機会:ラジオ、テレビ、新聞などのメディア出演へのつながり
6. 継続的な印税収入:本が売れ続ける限り、印税が入り続ける

ただし、商業出版は「本人が書きたい本」ではなく、「出版社が売れると判断した本」を出版するということです。そういう意味で、著者本人のビジネスにダイレクトに影響しないことは留意する必要があります。

出版業界の現状(市場規模/紙・電子/流通・返品)

【日本の出版市場規模の推移】

日本の出版市場は長期的な縮小傾向にあります。

時期市場規模前年比
1996年(ピーク)2兆6,564億円
2023年1兆5,963億円前年比2.1%減
2024年1兆5,716億円前年比1.5%減

出所:出版科学研究所『出版年報 2025年版』より作成

1996年のピーク時から約40%以上の市場縮小になっており、これは出版業界全体が構造的な課題を抱えていることを示しています。そういった背景を踏まえると、商業出版で執筆することの難しさは、かつてないほどハードルが高いと考えられます。

【紙書籍と電子書籍の動向】

紙書籍が縮小する一方で、電子書籍市場は成長しています。

メディア2024年市場規模市場全体に占める割合前年比
紙の書籍5,937億円約38%前年比4.2%減
電子書籍5,660億円約36%前年比5.8%増
雑誌(紙)2,520億円約16%
その他約960億円約10%

出所:公益社団法人 全国出版協会 出版科学研究所「出版指標」(2025年1月24日発表)

電子コミックやラノベが電子書籍を牽引しています。ビジネス書の電子書籍が大きな割合になっているわけではありません。ただし、企画によっては紙の書籍と電子の書籍が上記の比率のように1:1で売れることもクロスメディア・パブリッシングの書籍では出てくるようになっています(2025年12月時点)。

返品率と流通の実態

日本の出版流通は「委託販売制度」に基づいています。

【委託販売制度の仕組み】
– 出版社が書店に本を委託する
– 売れ残った本は書店から出版社へ返品できる
– 返品率は全体で30~40%(書籍は約40%近い)

日本の出版業界は委託販売制度に依存しながらも、返品率の高さで経営危機に直面している出版社も多く存在します。

商業出版に向く人・向かない人

商業出版に向く人の5つの共通点

 ① 読者視点・テーマ設定の明確性
– 「自分が書きたい」ではなく、「読者が何を求めているか」を考える
– 既存の本で不足している情報は何かを認識している
– 読者ターゲットが明確に定義されている

② 改善力と柔軟性
– 編集者からのフィードバックに対して、素直に改善できる
– 「自分の表現を守りたい」よりも「より良い本にしたい」という意識
– 複数回の修正を厭わない

③発信力(インフルエンス力)
– SNSやブログ、YouTube、Podcast、X、インスタグラムなど、日頃から継続的な発信をしている
– ひとつの指標としては、YouTube登録3万人、Xフォロワー1万人以上
– 自分の専門領域について、読者にわかりやすく説明できる
– メディア出演やセミナー講演などの実績がある

④ 実績・肩書の信頼性
– その本を書くに相応しい専門性や経歴がある
– 数字(売上、患者数、フォロワー数)で実績を示せる
– 「なぜこの人がこのテーマ?」という違和感がない

⑤ 市場ニーズへの敏感性
– 時流を捉えた題材の選定
– すでに類似本が出版されている場合、その差別化を明確にできる
– ベストセラーの事例を理解し、自分の企画への応用を考える

商業出版に向かない人の特徴

① 「自分が書きたい本」に固執する人
– 出版社の提案する修正に抵抗する
– 「このテーマでないと出版する意味がない」と主張する
– 読者ニーズより、自己表現を優先する

こういった著者の場合、編集プロセスで大きなトラブルになりやすく、最終的に出版が流れることもあります。

② 知名度がなく、インフルエンス力もない人
– SNSフォロワーがほぼいない
– メディア出演経験がない
– 出版によって初めて著者として認識されたいという考え

今はこの項目は必要条件になっているため、要件を満たない人は企画検討の遡上にのらないケースが多いです。

③ 根拠のない確信を持つ人
– 「この本は必ず売れる」という根拠のない主張
– 市場調査や競合分析なしに企画を立てている
– 「出版社が販売を頑張ってくれる」という他力本願な考え

④ 短期的な利益を期待する人
– 出版による利益(著者本人の売上還元)を期待する
– 出版までの期間(通常6~12カ月)に耐えられない
– 本の販売部数が少ないと失望する

商業出版は、著者のブランディングや長期的な信用構築が目的であり、短期的な金銭的リターンを期待すると、がっかりします。

商業出版の進め方(流れと期間:5ステップ)

ステップ①:出版企画書の作成(期間:1~2カ月)

出版企画書は、編集者に「この本を出版すべき理由」を説得するための戦略的文書です。

【必須項目】
– タイトル案(複数提案)
– 著者プロフィール(肩書、経歴、実績、SNSフォロワー数など)
– 対象読者と市場規模
– 本の目的と読むことで読者が得られる価値
– 既存の競合本との差別化ポイント
– 章立て・目次案
– 出版社内での稟議に使用できる根拠データ

編集者が重視する点
– 著者プロフィール(肩書、経歴、実績、SNSフォロワー数など)がきちんと書かれていて、編集者にとって魅力的だと判断された場合、打合せの連絡がいく場合があります。企画書以上に著者プロフィールを重視する編集者もいます。
– 企画書が「読者価値」「市場性」「著者力」のバランスを取っているか
– 出版社の営業・経営層を説得できるだけのデータがあるか
– 「この本は売れる」と確信させられるか

ステップ②:出版社(編集者)へのアプローチ

企画書が完成したら、自分の企画に合致したジャンルの専門出版社を選定し、編集者に持ち込みます。

【重要なポイント】
– 編集者との直接接触(セミナー、SNS、出版エージェント経由など)が有効だが、その企画を評価される可能性は少ない(実際の業界での市場ニーズと出版での市場ニーズは乖離しているため)

ステップ③:編集会議を通す(期間:1カ月~)

企画書が編集者に認められると、その編集者が社内の「企画会議」で提案します。

【企画会議の流れ】
1. 編集者が「この本を出したい理由」を社内で説明
2. 営業部、経営層が市場性・採算性を検討
3. 承認を得ると、ようやく出版が決定される

会社によって稟議のシステムは異なり、編集部では通ったが、営業部で棄却されるなどということは起こります。また、企画通過が数カ月に及ぶこともザラであるので、気長に待つことをおススメします。

ステップ④:執筆と編集(期間: 6カ月~1年程度)

企画が通ると、著者が執筆を開始します。

【プロセス】
– 編集者との複数回の打ち合わせ
– 原稿の作成(通常2~6カ月)
– 編集者による編集・修正指示
– 複数回の原稿修正(編集者による)

ステップ⑤:製作・印刷・流通(期間:1~2カ月)

最終原稿が決定したら、デザイン、印刷、流通がはじまります。

【期間の目安】
-全体で6~12カ月が一般的
-迅速な場合は4~6カ月でスピード出版 

印税の基礎(概念・計算方法)

【基本的な印税率】

日本の商業出版における印税率は、本体価格(税抜)の4~10%が標準ですが、出版形態、販売部数、出版社の方針によるので、かなり幅があると考えていただいてよいです。

著者区分印税率条件
新人・初出版著者0~8%印税をPRなどに充当する判断もあり、0%の場合も
実績のある著者2~10%複数出版実績あり。企画による印税率の幅がある
ベストセラー著者10%以上著名人、売上実績多数

※出版社により、全く考え方が違うことを留意しましょう。

【印税額の計算例】

定価1,500円の書籍が2,000冊売れた場合:
・印税率:10%
・1冊あたりの印税=1,500円×10%=150円
・合計印税(2,000冊)=150円×2,000=300,000円

【部数は可変】

出版社が初版発行部数を決定する際、以下の要素を考慮します:

要素 判断基準
著者の知名度SNSフォロワー数、メディア露出実績
類似本の販売実績競合書が何部売れているか
ジャンル特性ビジネス書は3,000~5,000部程度
流通計画全国配本か地域限定か

よくある誤解とNG行動

【よくある誤解6つ】

誤解①:「出版企画書を出せば本になる」
企画書は提案であり、承認ではありません。編集会議で可決されるには編集者とのリレーションが不可欠になります。

誤解②:「著者の知名度がなくても、企画が良ければ通る」
現在は、著者の知名度だけでなく、影響力(SNSフォロワー数、メディア実績)が企画通過の重要な判断基準です。知名度ゼロの著者が商業出版を実現するには、極めて高いハードルを超える必要があります。

誤解③:「出版社が販売を全部やってくれる」
著者も販売促進に協力する必要があります。ビジネス書では、著者の発信力(インフルエンス力)が販売数を左右します。

誤解④:「本を出したら、そこそこ売れる」
毎年約6万~7万冊が出版されるなか、その多くが低迷しています。出版後の著者自身のプロモーション活動が極めて重要です。

誤解⑤:「自分の表現を守るべき」
編集者からの修正提案に素直に応じるべきです。編集者は「売れる本」を作るための修正を提案しており、著者の表現欲求ではなく、読者価値を優先すべき局面が多くあります。

誤解⑥:「同じテーマで複数の出版社から出してはいけない」
同じテーマで別の出版社から出版することは可能です。ただし、「全く同じ文章」を別出版社で出版することは、著作権上NGとなります。

例外が起こるケース(採用につながる条件例)

商業出版は「出版社による厳格な審査」が前提ですが、実務上、以下の条件下では例外的に企画が通りやすくなります。

条件①:著者が著名人またはメディアに頻繁に露出していて、時流にのったテーマ、独自性の高いテーマで、売れるテーマをもっている場合
有名タレント、テレビ出演者、YouTuber、インフルエンサー、経営者など、既に知名度がある著者の場合、企画書の質が多少低くても企画が通る傾向があります。
理由:出版社は著者の知名度・影響度=販売部数と直結させているため。

条件②:既にベストセラー著者である
直近半年で10万部以上を売り上げた著者の場合、次作は企画書の質が低くても通りやすい傾向があります。

条件③:確実な販路が保証されている
初版5,000部以上の購買が保証されている場合、出版社は販売リスクが低いため、企画が通りやすくなります。ただし、現在では、それでも企画が通らない場合もあります。

条件④:話題性が極めて高く、タイムリー
社会的な注目を集めているテーマや、大きなイベント、オリンピックや万博などの開催が控えている場合、出版社が「メディアでの露出が期待できる」と判断し、企画が通ることがあります。

条件⑤:編集者が個人的に企画を強烈に推す
編集者が企画会議で強く主張し、経営層を説得できる場合。ただし、これは編集者自身が企画の責任を負うことになるため、よほどの確信がない限り起こりません。

FAQ(よくある質問)

Q1:商業出版は誰に向いている?

A:以下の要素を備えている人に向いています。
– 専門性がある:その分野で実績・経験がある
– 発信習慣がある:SNS、ブログ、Podcastなど、日頃から情報発信をしている
– 読者ニーズを理解している:「自分が書きたい」ではなく「読者が求めているか」を考える
– 改善を受け入れられる:編集者の提案に柔軟に対応できる
– ブランディング目的が明確:本を通じて、自分や自社をどうブランディングしたいのかが明確

逆に、「作品を表現したい」「自分のこだわりを貫きたい」という人は、自費出版の方が向いています。

Q2:企画が通るまでの期間の目安は?

A: 一般的には以下の通りです。
– 編集者との打ち合わせから企画会議通過まで:1~3カ月
– 企画通過から刊行まで: 6カ月~1年(※出版社によります)

Q3:ブランディング目的だけで商業出版に向く?

A:微妙な判断が必要です。

【向く場合】
– 営業やコンサルティング、講演ビジネスを行っている
– 本を「営業ツール」として活用できる
– SNS発信や自社メディアを持っており、本の宣伝に協力できる

【向かない場合】
– 単に「専門家として認識されたい」というだけ
– メディア露出や発信習慣がない
– 本の販売部数を期待していない

企業出版(企業が費用を負担する出版形式)の方が、ブランディング目的には適切かもしれません。

まとめ

商業出版は、著者にとって費用負担がない一方で、実現難易度が高く、実現後も著者自身の行動が販売に大きく影響する出版形式です。

【商業出版の成否を分ける要因】

1. 企画書の質:編集者が「社内稟議を通せるか」がカギ
2. 著者の知名度・発信力:
販売見込み数の判断基準
3. 市場ニーズの正確な理解:競合分析と読者ニーズの把握
4. 編集者との信頼関係:修正提案への対応姿勢、相性
5. 出版後のプロモーション:著者自身の宣伝活動

【商業出版と企業出版の選択基準】

選択基準 商業出版 企業出版
費用負担 出版社が全額負担 企業が全額負担
目的 広く売れる本 企業ブランディング・営業
流通 全国書店への配本 企業ブランディング・営業
実現難度 極めて高い 低い

ブランディングや営業、採用広報を主な目的とされる方は、企業出版が適している場合がございます。
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