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帯で売れるか決まる?!重要な本の帯コピーとは?
書店で本を手に取り、1番最初に目にするのは、表紙とタイトル、そして帯です。
書店で陳列されているほとんどの本には帯がついています。書店に並ぶ本は読者に選ばれ、手に取ってもらえるように、帯には目を引くコピーや最新の売上部数・ランキング、魅力的なイラストや著名人からのコメントなどが入り、様々な工夫が凝らされています。
普段、何気なく目にする帯ですが、一体どんな役割があり、どんな考え方で作られているのか、帯で売上は変わるのかなど、考えたことはあるでしょうか? 実はみなさんが想像する以上に、帯は本にとって重要な要素なのです。今回の記事では、本の帯の役割について、種類や構造、帯を交換するメリット・デメリットについて詳しくお伝えします。
本の帯の役割
帯は、読者に向けてタイトルだけではわからない本の魅力・売り文句となるキャッチコピーを伝える役割を果たしています。
カバー同様に、本の帯は目に止まりやすく、選ぶときの参考にする人も多くいます。帯のキャッチコピーに惹かれ、購買に至る人もいるため、帯は集客効果への影響も高く、重要な本のパーツであり販促ツールだといえます。
また、帯は「簡単に着せ替えることができる」点でも非常に重宝されています。表紙・カバーを作り直すには、その度にコストや手間がかかりますが、帯だけであれば低コストかつカバーを変えるよりも手軽に表紙のバージョンアップや情報のアップデートを実現できます。
このように、日本では本に帯がついていることは当たり前ですが、実は、これは日本特有の文化であり、海外ではほとんど目にすることがありません。
海外はペーパーバックでの出版も多くカバーすらついてないものもあります。ペーパーバックとは、本来はソフトカバー(並製本)と同じ意味であり、ハードカバー(上製本)のような厚紙・布張りなどのカバーを用いていない形態の本を指します(日本では、コンビニなどで売っているようなカバーをかけていない〈表紙だけの簡易な製本〉の書籍を指していうこともあります)。
帯の種類
サイズによる種類わけ
・通常帯(腰帯)
四六判の場合、およそ高さ45mm〜60mmが通常の帯のサイズとされている。このサイズは、カバーを印刷する際の余剰で一緒に刷る事ができることから、コストパフォーマンスがいいため、一般的にこの高さの帯が多いとされる。
・高帯
通常帯(45mm〜60mm)に対して、60mm以上の帯は高帯と表現することが多い。
・特大帯(全面帯、幅広帯、マイナス2mm帯など)
実際の本の天地より2~5mmほど低く作られた帯。カバーをほとんど覆うため、重版のタイミングなどでカバーデザインのリニューアルを図る場合などで利用される。大幅な印象の変更が可能になる。
帯の構造(縦書きの本の場合)
読者が読む順番を考えたとき、そで部分や裏表紙の面に重要なワードを置いてもあまり見られません。手に取るお客様が最初に目にする部分である表紙に一番伝えたい事を入れる必要があります。
そして、表紙側に来る面の帯のキャッチコピーは以下のような構成で作成されます。
構図は書籍によって変動することはありますが、おおよそこのように4つに分けることができます。読まれる順番としては、「①メインコピー ②サブコピー1 ③囲み ④サブコピー2」の順になることが多いでしょう。
「サブコピー2」の部分はメインやサブコピーに満たない情報であり、書かれていない帯も多いですが、ニッチな層にむけて間口を広げたいときや、コンテンツの新しさを伝えたいときなどに書かれます。
実際の帯の例
失敗しない本の帯のキャッチコピーの基本的な考え方
タイトル、デザイン、帯は全て一貫性を持って作られており、タイトルと帯は主従関係にあります。帯は単体では成り立つものではなく、タイトルを目立たせるための引き立て役であるということを忘れてはいけません(ただし、書籍のタイトルが抽象的でわかりにくい場合は、帯のコピーがメインになるケースもあります)。
そして、タイトルと帯は対の関係になっているのが基本的な考え方です。
例えばタイトルが抽象的だった時、帯は具体的な内容を表記するなどです。これは逆もしかりですが、タイトルと帯で対になるような、真逆の世界を表現する構造になっている方が補完関係になるためです。もちろんこれは全てに当てはまるわけではなく、以上のような基本的な型から崩しつつ、その本にあった帯のキャッチコピーを作成していきます。
タイトルや帯は感性だけで作られるわけではなく、このような基本的なロジックに沿って作られるのが一般的です。
そしてメインコピー、サブコピーには、ターゲットの心に引っかかるような、「今これを読まないと後悔してしまう」と思わせるストーリーを帯で作ることで、手に取ってもらいやすくなります。
帯変更のメリットとデメリット
基本的に帯変更は重版などのタイミングで行われます。その場合、表紙のデザインを壊すことがないよう、同じサイズの帯でメインコピーやデザインの変更が主ですが、カバーのデザインのリニューアルを考えるときは、先ほど「帯の種類」で紹介した特大帯(マイナス2mm帯)を用いることがあります。
メリット
・スピード感を持って展開できる
カバーの変更をする場合、取次※への連絡・確認が必要になりますが、帯の場合はその工程が必要ないため、スピード感を持って書店へ展開することができます。
※出版社と書店の間にあって、書籍を出版社から仕入れ、書店に卸売りする流通・販売会社ほとんどの出版物は取次を介して流通している
・カバー変更よりコストが抑えられる
カバー用紙に比べて帯は薄い紙を使用したり、カラーの種類を絞ったりと、コストがかからない方法をとることができます。
また、カバー変更を行うと、改訂版という扱いで本自体を刷り直さなければならなくなり、新刊扱いになってしまいます。しかし、帯の変更であれば、そのコストを削減できます。
・再販促効果
「〇万部突破」や「〇〇で紹介された」「ランキング〇位」など売り文句を最新のものにアップデートすることでさらなる販促が狙えます。
・印象を変えてリーチできてなかった層へのアプローチが可能
特大帯(マイナス2mm帯)を用いて、デザインを一新することで、今までとは違ったターゲットへのアプローチが可能になります。こちらの事例は後ほどご紹介致します。
デメリット
・コストがかかる
高帯や特大帯の場合、印刷・製本会社の使用するトライオート(カバーをかける機械)によっては対応できず手でかける場合もあり、余計にコストがかかってしまう場合があります。しかし、現在の最新機種では高帯対応もされてきています。
・前の本を買った人が間違って購入してしまう可能性がある
同じ本でもがらりと印象が変わるため、違う本だと思い再購入してしまい、クレームにつながる可能性があります。
成功事例から考える帯分析
特大帯への変更でデザインリニューアル! 販促効果約6倍!『自分を変える習慣力』
2015年に刊行された『自分を変える習慣力』(三浦将/クロスメディア・パブリッシング)は著者である三浦 将氏のシリーズ第一弾となります。Amazon(仕事術・整理法)ではベストセラー1位を獲得しました。
こちらの書籍は出版当時、シンプルなデザインの表紙からか、男性に好まれて手に取られていました。順調に重版を重ねていましたが、売り上げが停滞した際、「この本の内容は男性だけではなく、女性へもリーチできるのではないか」との書店から帯の変更の要望がありました。女性向けへとデザインを一新するべく、通常帯だったものから、特大帯(マイナス2mm帯)へと変更し、雰囲気をがらりと変え販売することにしました。結果的に売り上げは約6倍にもアップしました。
帯の変更で売上200万部へ『思考の整理学』
『思考の整理学』(外山 滋比古/筑摩書房)は、受動的に知識を得るだけでなく、「自分でものごとを発明、発見する」能力を身につけるよう勧める書籍であり、ビジネスマン向けの教養書シリーズの一冊として発売されました。1986年に文庫化され、その後の21年間で16万部を売り上げました。
ある時、盛岡市の書店員が「もっと若い時に読んでいれば…」というポップを出したところ、売れ行きが好調になったそうです。これを知った営業担当者が全国の書店に売り込むと、2008年の東京大学生協(本郷書籍部)、京都大学生協の書籍販売ランキングで1位を獲得しました。このことから「東大・京大で1番読まれた本」というキャッチコピーをうたった帯へ変えたところ、さらに売り上げを伸ばしました。結果、2009年に100万部、2016年には200万部を超えるベストセラーとなりました。
まとめ
今回は本の帯について詳しくお伝えしました。
購入者の目に止まりやすい本の帯は、集客効果への影響も高く、販促ツールとして重要な役割を果たしています。
実際、ご紹介した事例のように、帯の変更で更なる売上のアップを狙うことも可能なのです。しかし、元々あまり売れてない本が帯を変えて必ず売り上げが伸びるかというと、そうとも限りません。本の中身であるコンテンツがしっかりと伴っていることが大前提であり一番重要なのです。良い帯は売り上げを伸ばす手伝いをしてくれますが、根本の書籍自体が良い物でないと、帯だけを変えても売上には繋がらないでしょう。
ぜひあなたも次回、本屋へ行く時は、帯に注目してみてはいかがでしょうか。
帯と同様に重要なタイトルについて詳しい記事はこちら↓
『売れる本の「タイトルの考え方」とは?ベストセラー編集担当者が教えます!』