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エンゲージメントマーケティングとは?意味や戦略事例を解説
「エンゲージメント」という言葉をよく見かけるようになりました。エンゲージメントとは絆、関係性、約束という意味であり、ビジネスにおいては顧客エンゲージメントや従業員エンゲージメントなどというように、企業や商品・サービスに対する消費者の愛着度、企業に対する従業員の愛着度を表す言葉として使われます。
この記事では、以前からあったエンゲージメントの考え方をマーケティングに取り入れた「エンゲージメントマーケティング」が近年再び注目を集めている理由とともに、エンゲージメントマーケティングの戦略について簡単に触れていきます。
エンゲージメントマーケティングとは
エンゲージメントマーケティングとは「潜在顧客⇒見込み顧客⇒買う気満々の見込み顧客⇒顧客⇒継続顧客⇒ロイヤル顧客・アンバサダー」と長期にわたって顧客との関係を続けるマーケティングを意味します。
身近なエンゲージメントマーケティングの例
- Amazonや楽天で買い物し、ポイントがたまる。「あなたにおすすめ」と推奨されることも多い
- 車を買った後も車検だメンテンナスだといつまでも販売店にたよってしまう
- 保険料を毎月払っているが時々「こんなサービスを付加しませんか」と電話がかかってくる
など、これらはすべて企業が皆さんとの関係を継続しようとする、つまりエンゲージメントしている行為です。また、近年脚光を浴びている、サブスクリプションサービスもエンゲージメントマーケティングを行っているといえます。
このようなエンゲージメントマーケティングが求められるに至るには様々な時代背景があります。
マーケティングの在り方の変化
顧客の購買行動は時代とともに年々大きく変化しています。それに伴ってマーケティングの在り方も変わっていきました。経営学者であるフィリップ・コトラー博士のマーケティング理論によると、マーケティング1.0では「製品中心」、2.0は「消費者中心」、3.0は「価値中心」、そしてマーケティング4.0では「自己実現中心」というように、時代の流れによってアップデートされているといわれています。
この変化にはインターネットの登場や携帯の普及が大きく関係しています。消費者は様々な情報へアクセスできるようになり、そこから得た情報によって選択肢を絞り、最適なモノを選び購入しているのです。
さらに、ブログやSNSの登場によって顧客自らが口コミやレビューなどを簡単に発信できるようになったことから、企業は製品購入までのプロセスだけでなく、購入後の顧客の行動まで考えなければいけない時代になりました。
コトラーの言うマーケティング4.0の「自己実現中心」とは、個々のユーザーの欲求に対し、企業が商品・サービスによってその欲求を満たすことで、顧客とのエンゲージメントを築き、継続的にエンゲージメントを高めていくことでファン化し、顧客が自ら商品・サービスを他人に推奨してくれる関係を構築をすることなのです。
とはいえ、コトラーがマーケティング4.0を提唱したのは2014年ですから、それほど新しいものではありません。エンゲージマーケティングが近年再び注目の後押しとなったのは、様々なITツールの登場と充実が引き金となっています。
今までは顧客を1人1人の個人として識別・理解し、長期的関係を築くことは人力で頑張ったところで数十名程度が限界でした。しかし、顧客データベースやマーケティングオートメーションといったITツールの普及により何千、何万の顧客管理が可能になったのです。
エンゲージメントマーケティングの戦略
顧客データベースに格納された名前のある実名顧客(最初は匿名顧客)との長期的な関係継続が前提となるエンゲージメントマーケティングにおいては、長期的でブレない視野とシナリオであるマーケティング戦略が大切です。
従来のマーケティングと同様、ターゲット戦略、競争戦略、ブランド戦略の3つに加えて、エンゲージメントマーケティングでは行程戦略も考える必要があります。これら4つの戦略重要なポイントについて順にご紹介します。
ターゲット戦略
商品・サービスがどのようなニーズの人に買ってもらえるのか、継続購入し、ファンになってもらえる相手とはどのような人なのかを考え、ターゲットを設定します。
エンゲージメントマーケティングのターゲット戦略の相手は、基本的には顧客データベースに格納された実名個人となります。
また、エンゲージメントマーケティングは顧客と長い関係構築をめざしていることから、相手となる顧客は時と共に変化します。顧客の行動・心理は変化し続けることを前提にターゲット戦略を考える必要があります。
ブランド戦略
様々な施策から、最終的に企業、そして商品・サービスはお客様にどのように認知されることを目指すのかを考え、ブランドを構築します。
エンゲージメントマーケティングは見方を変えれば、「ブランド戦略でいうところの『理想の顧客像』に長い期間をかけて顧客を育成していくこと」とも言えます。
ブランドマーケティングに似ていますが、ブランドマーケティングは基本的に匿名顧客を対象にしていることが、エンゲージメントマーケティングとは異なる点です。
エンゲージメントマーケティングによるブランド戦略を立案する際に必要不可欠になるのが潜在顧客~ロイヤル顧客・アンバサダーに至る行程ごとに心理(パーセプション)の変化をしっかり計測し、それぞれの行程で目指したブランド・パーセプションがどの程度醸成できているのか、把握できるようにしておく必要があります。
競争戦略
どんな競争相手と顧客の取り合いをして、自社はどうすれば競合に勝つことができるのかを考えます。どんな商品・サービスにおいても自社と顧客の関係だけでマーケティングするのではなく、競争相手の存在を意識する必要があるのです。
エンゲージメントマーケティングならではの競争戦略では6つの競争に分けて考えます。
<前半:初回契約獲得・顧客化までの競争〉
前半第一回戦:解決策間の競争
最初の競争は直接の競合商品ではなく、次元の異なる他の解決策との競争になることが多いため、自社が属する商品カテゴリーを買うことでニーズを満たせるかという解決策の競争です。
前半第二回戦:有力候補への生き残り競争
ユーザーが自社の属する商品カテゴリーを買うことでニーズを充足させようと決めた後に同一カテゴリーの競合商品と間に起こる競争で、多くの競合商品の中から、2~3の有力候補に残るための競争です。
前半三回戦:三社による厳しい比較検討
消費者が本気で比較検討する場合はたいてい対象が2〜3つに絞られたときです。これに選ばれれば購入(受注)という形になります。
<後半:自社を選び続けてもらう競争>
後半第一回戦:初期マスター段階での離脱阻止競争
せっかく購入に至っても期待値を下回ったり、上手く利用できないなど、ストレスとなるようなことが起きると、たちまち離脱してしまいます。ここで手を抜くとすぐに競争相手に流れてしまう可能性もあることから、最も離脱リスクの高い競争です。
後半第二回戦:顧客成功実現に向けた人材獲得・人材育成競争
人材勝負の段階になるため、自社の社員のパフォーマンス強化が必要です。競争相手との人材獲得・人材育成競争となります。
後半第三回戦:アンバサダー育成競争
ロイヤル顧客育成はLTV(Life Time Value)をもたらし、さらに熱烈なファンになると周囲に自発的かつ意欲的に推奨してくれるアンバサダーになります。
行程戦略
この行程戦略はエンゲージメントマーケティング固有のマーケティング戦略であり、マーケティング全体の設計図となります。潜在顧客~ロイヤル顧客・アンバサダーのそれぞれの行程により、課題も施策も異なってきます。
基本的には「リードジェネレーション」「リードナーチャリング」「クロージング」「CRM」の4つの行程に分けて考えますが、必要に応じてさらに「行程細分化」を行います。
行程戦略のフロー
行程ごとのマーケティング施策という形で全体設計した時、
- 顧客データが何も取得できていない行程(潜在顧客)
- 顧客データが取得できている行程(訪問者)
- 個人情報が取得できている行程(見込み客)
- 購買データが取得できている行程(顧客)
①②の行程をリードジェネレーション、③の行程をリードナーチャリング&クロージング、④の行程をCRMとします。
この行程ごとに施策を考える際に重要なのは、行程のゴールを客の「行動」だけでなく「パーセプション(心理)」でも目標化することです。なぜなら、行動の変化は客の心理の変化の結果ですから、心理に踏み込まないと、施策が表層的なものになってしまうからです。
パーセプション(心理)のゴールを規定することで客を動かすコンテンツのアイディアが考えやすくなり、コンテンツ企画のバリエーションを豊かにしてもメッセージに一貫性が生まれるのです。
このようにエンゲージメントマーケティングを行う際には、これらの4つの戦略を考えなから取り組むことで、「部分最適思考」に陥ることなく、全体像を見据えながらマーケティングに取り組むことができます。
まとめ
本記事ではエンゲージメントマーケティングについてお話いたしました。エンゲージメントマーケティングは時代と共に台頭し、現在のマーケティングにおいて必要性が増してきています。
また、このエンゲージメントマーケティングは対面営業に依存しない新しい売り方も実現できます。コロナによって加速した非対面営業(インサイドセールス)の新しい売り方として、デジタルを駆使したエンゲージメントマーケティングは非常に有効なのです。