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働き方改革とは?いまさら聞けない働き方改革の目的やメリットについて紹介

#マーケティング基礎知識

昨今の社会において「働き方改革」に多くの企業が取り組んでいます。

「働き方改革」は、組織の規模に関わらず、あらゆる企業にとって必要な取り組みといえます。

しかし、実際に「働き方改革」は具体的に何を指しているか分からない方も多いのではないでしょうか?

本記事では、「働き方改革」とは何を指しているのか、そしてその目的やメリットなどについて詳しく解説します。

働き方改革とは

「働き方改革」とは政府が推進している「一億総活躍社会」の実現に向けた取り組みの一つです。

「一億総活躍社会」とは、少子化が進む日本において「50年後も人口一億を維持し、誰もが家庭で、職場で、地域で、生きがいを持って、充実した生活を送ることができる社会をつくること」を目標とした改革です。

日本は「少子高齢化による労働人口の減少」や「働く人のニーズの多様化」などの問題に直面しています。

「働き方改革は」この課題解決のために、働く人に寄り添い、それぞれの事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を目指した改革です。

結果として、ひとりひとりが充実し、より良い将来の展望を持ち生活できる環境の実現を目標とするのが「一億総活躍社会」といえます。

首相官邸のHPには「働き方改革」について以下のように記載されています。

働き方改革は、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ。多様な働き方を可能とするとともに、中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現するため、働く人の立場・視点で取り組んでいきます。

首相官邸HP

この改革実現のために、2018年に通常国会で「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(以下「働き方改革関連法」と表記)が成立しました。

この「働き方改革関連法」により、既存の労働基準法、労働安全衛生法、労働時間等設定改善法、パートタイム労働法などを含む複数の法律が一括改正されました。

働き方改革に至った背景

現在でこそ働き方改革に伴う企業ごとの取り組みはさまざまであり、仕事をしているほとんどの人が「働き方改革」という言葉を耳にしたことはあるかと思います。

では、なぜ「働き方改革」を行うことなったのでしょうか。

その大きな要因は、少子高齢化による人口の減少です。

現在の人口減少率のままいくと、2050年には総人口が1億人を切ると予想されています。このままでは労働力の主力である生産年齢人口も減少の一途をたどり、日本全体の生産力・国力の低下は免れません。

また、日本の労働生産性の低さも、働き方改革を推し進めた一員でしょう。日本の労働生産性は主要先進7国(アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・日本・カナダ・イタリア)のうちで最下位であり、その他諸外国のなかで比べても低迷を続けています。

このような背景から、内閣は本格的に「働き方改革」に乗り出しました。

働き方改革の目的

長時間労働の解消

「働き方改革」以前より、時間外勤務の長さや有給消化率の低さなど、長時間労働の是非についてはしばしば問題視されていましたが、多くの企業では優先順位が低く、日本全体ではあまり進展していませんでした。

しかし、長時間労働により、新入社員が長時間労働の末に自殺してしまうという痛ましい事件が起きたことなどがきっかけになり、世間でも過重労働の抑制への声が高まりました。

このようなことを受け、政府は長時間労働の是正に本格的に乗り出すためにも「働き方改革」の促進に取り組むようになりました。

非正規社員と正社員との格差是正

従来の日本では正社員と非正規雇用労働者(アルバイト・パート・契約社員・派遣などの総称)では、正社員が優遇されている事が当たり前であり、給与水準や福利厚生の有無など、さまざまな場面で格差が生じていました。

「働き方改革」では、このような賃金・待遇格差を解消するために「同一労働・同一賃金」という制度が導入されました。

「同一労働・同一賃金」とは、「同じ仕事をする労働者は、正社員・非正規労働者を問わず、同じ賃金を支給しなければならない」という考え方です。

これにより、不合理な待遇差がなくなり、少子高齢化によって問題になっている労働参加率の向上や、人材不足の解消にも期待されています。

多様な働き方の実現

働き方改革推進の背景でもお伝えしたように、少子高齢化の影響により主な労働力である生産年齢人口は減少傾向にあります。これを改善するためにも、年齢や性別、家庭事情に関係なく、働きたくても働くことができなかった人々が働ける柔軟な制度の整備が急がれています。

働き方改革では主に以下の3つの点が意識されています。

  • 高齢者の就労促進
  • 家事、育児、介護などと仕事の両立ができる柔軟な制度改革
  • テレワークや副業・兼業がしやすいなど働き方の多様化

近年、共働き世帯や単身世帯が増加し、家事や育児、介護などと仕事の両立の必要性が増えたことや、少子高齢化による労働人口の減少改善のために定年後も働き続けられるような制度整備など、多様な働き方に対するニーズは年々高まっていました。

さらに、2020年から世界中で爆発的な感染流行をみせた新型コロナウィルス感染症によって、社会の形は大きく変化しテレワークの導入などにも注目が集まっています。

このような変化やニーズに柔軟に対応するためにも、労働時間の制約緩和や、フルタイム以外の労働に対する処遇の改善、時短勤務、フレックス制度、副業・兼業を可能にするなど、多様な働き方ができるよう、働き方改革による労働環境の整備は非常に有効です。

働き方改革関連法とは

「働き方改革関連法」とは、前述した通り、働き方改革を推進するために、労働関連の法律が整備され改正されたものの総称です。
「働き方改革関連法」は既にあった法律が改正されたものであり、労働に関して新たな「働き方改革関連法」が追加されたのではないことを理解しておきましょう。

働き方改革関連法の概要は、大きく分けて次の9つのポイントとなります。

時間外労働の上限規制導入

労働基準法などの改正などにより、時間外労働に対して上限が設定され、「月45時間、年360時間」が原則となりました。

また、臨時的に特別な事情がある場合でも、①年720時間②複数月平均80時間③単月100時間未満が限度となり、そしてこのような場合でも、時間外労働が月45時間を超えるのは6か月までという上限が儲けられています。

勤務時間インターバル制度の導入促進

「勤務時間インターバル制度」とは、労働者に十分な生活時間や睡眠時間を確保してもらう為、前日の勤務終了時刻から翌日の勤務開始時間までに、一定の間隔を開け、休息を確保しなければならないとする制度です。

年次有給休暇の確実な取得(年5日)

10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、毎年5日以上の有給休暇を時季を指定して与える事が義務づけられました。

これにより、年次有給休暇の未消化をなくし、さらに有給を取得しやすい環境がとれるようになります。

労働時間状況の客観的な把握

労働者の十分な生活時間や睡眠時間を確保するために、厚労省が定める方法で、すべての労働者の労働時間状況の客観的な把握が定められました。

厚労省が定める方法とは、「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータなどの電子計算機の使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録」などによる方法を指しており、改正労働安全衛生規則第52条7の3に記されています。

手書きや自己申告などで管理していた企業は見直す必要があります。

月60時間超残業に対する割増賃金引き上げ

時間外労働が月60時間を超えてしまった場合、超えた時間に対して50%以上の割増賃金率による割増賃金を支払う必要があります。

これまでは大企業のみに課せられていましたが、2023年4月からは中小企業も対象になります。

「フレックスタイム制」の拡充

より柔軟な働き方実現のために、「フレックスタイム制」が拡充されました。

従来ではフレックスタイム制の精算期間は1か月でしたが、これが3か月に延長されました。

これによって、ある月に十分に労働できない場合でも、他の月に労働時間を振り分ける事ができるため、より柔軟に働くことが可能になります。

雇用形態による待遇差の禁止(公正な待遇の確保)

パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法などの改正によって、雇用形態に関わらない公平な待遇の確保が定められました。

そのために「同一労働・同一賃金」が導入されました。

これによって、同じ企業で働く正社員と非正規社員(パート・アルバイト・派遣社員など)の職務が同じ場合の給与の統一と、取得できる権利として福利厚生、賞与などの面であらゆる待遇差を設けることが禁止されました。

「高度プロフェッショナル制度」の導入

「高度プロフェッショナル制度」とは、一定の年収要件(年収1075万円以上)を満たしており、職務の範囲が明確かつ、高度な専門知識が必要とする業務に従事する労働者に対し、労働時間や休日・深夜の割増賃金などの規定を撤廃する制度です。

条件に当てはまる労働者は、従来のような労働時間ではなく、得られた成果での評価になります。これにより生産性の向上や、労働基準法が適用されないため労働者の裁量で出社・退社時間、休暇を自由に決めることができ、ワークライフバランスの実現が可能になることが期待できます。

産業医の権限強化

産業医とは、労働者の健康・安全・衛生を守るため、専門的な立場から指導・助言を行う医師を指しています。

従業員の健康を守るため、従業員数が50名を超える事業者はこの産業医の選任義務を負うことが定められました。企業は、従業員の労働時間や勤務状況などの情報を産業医に提供しなければなりません。

健康管理に関する産業医からの勧告内容などは衛生委員会へ報告することが義務付けられました。

また、企業による従業員の健康情報の補完や収集などは管理ルールを設けることで、従業員が健康診断や健康に関する相談を安心して受けられるようにすることも促進されています。

働き改革に取り組むメリット

従業員のエンゲージメント向上

働き方改革が促進されることで、自身の家庭環境やキャリアビジョン、ライフスタイルに合った働き方や労働環境を自由に選択できるようになります。

しっかりとした休息や、副業や新たなスキルの習得、家族や趣味に費やせる時間が増えたりなど、より生活を豊かにする時間が手に入り、ビジネスとの両立でライフワークバランスが実現します。

このように、従業員が働きやすい環境を整えることで、従業員の企業に対するエンゲージメントの向上が期待できます。

生産性の向上

「労働時間が短くなると売り上げが落ちるのではないか」という考えの経営者も少なくはありません。労働時間=売上へ直結であれば、経営者としては長時間働いてほしいでしょう。

しかし、「生産性」という指標を用いて考えるとそれは変わってきます。

生産性=成果(アウトプット)/労働時間(インプット)

生産性は労働時間のみで語ることはできません。

長時間労働がなくなり、労働時間が短縮されると、限りある時間の中で同じ量の業務をこなすために、いかに効率良く業務を行い成果を出すのかという工夫が求められます。そのため、従業員の集中力が高まり、一人ひとりの生産性が向上します。

これまでのただダラダラとした雰囲気を一新し、従業員の業務に対する意識の根本的な改善につながります。

人材不足の解消

慢性的な人材不足を抱える企業は多く、人材確保は非常に重要視されています。

働き方改革に積極的に取り組み、ワークライフバランスの取れた働きやすい労働環境であるということを対外的に発信することで、自社のPRに活かすことができます。

求職者にとってライフワークバランスがしっかりととれており、従業員のキャリアプランやライフスタイルを大切にしてくれる企業は、とても魅力的であり、高い評価を得る事ができます。

特に、昨今の若者は自身のライフスタイルの実現やライフワークバランスの実現に対する意識が強いとされているため、働き方改革に積極的な企業は若者の目にも止まりやすくなるでしょう。

また、副業可能やテレワークの導入、雇用形態による待遇差の是正などができれば、年齢や家庭環境、居住地に関わらずさまざまな人材を数多く採用できるようになります。

働き方改革の取り組み事例

トヨタ自動車株式会社

日本屈指の自動車製造業界大手であるトヨタ自動車株式会社は、2017年4月より働き方改革に対する取り組みを本格的にスタートしています。

7万人以上の従業員がいるトヨタ自動車では、長時間労働が当たり前になっていました。そこで、在宅勤務制度の導入やITツールを活用した業務の効率化や高度化など、新たな働き方の浸透にも力をいれました。

生産性向上と多様な働き方により、時間を創出していくことで、新たな課題への挑戦や私生活の充実、健康づくりなどのために、多様な個人が成長できる環境をつくっているのです。

他にも、年次有給休暇取得の推進や女性の活躍推進と育児支援、障がい者雇用機会の充実など、積極的に働き方改革に取り組んでいます。

株式会社ZOZO

日本最大級のファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営する株式会社ZOZOは「ろくじろう」という制度を導入しています。

この「ろくじろう」制度は「8時間労働が当たりまえ」という日本人の常識を見直すべく、「6時間労働が許される」という取り組みです。

長時間労働の改善のためにも「短い時間でも仕事が終わるように生産性を上げよう」という意図が込められています。

また、1日最大2時間の時短利用ができる「家族時短」の実施など、従業員のライフワークバランスの実現に積極的に取り組んでいます。

まとめ

「働き方改革」をしっかりと理解し取り組むことは、労働環境の是正に繋がるため、多くの企業が取り組むべき改革です。

積極的にこの改革に取り組むことは、社員が「働きやすく働きがいのある職場」を作ることにつながります。結果的に従業員の生産性やモチベーションの向上になるのです。

もちろん、社内だけでなく対外的にも自社のイメージの向上や社会からの信頼を得ることができます。

働き方改革に着手できていない、あるいは課題を感じている企業はこちらの書籍が参考になるかもしれません↓↓
なぜ残業を減らしたのに、会社が儲かるのか?」(萩原京二 著)