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ナラティブとは?意味やビジネスにおけるストーリーとの違いを解説!

#マーケティング基礎知識
#マーケティング用語

ナラティブという言葉をご存じですか?あまり耳馴染みが無い方も多いかもしれません。

ナラティブは近年さまざまな領域で使用され、さらにビジネスシーンでは、ナラティブマーケティングという手法も注目されています。

本記事では、まずナラティブとは何かという概念やナラティブアプローチについて前半でお伝えし、後半では、ビジネスシーンで活用され始めたナラティブについて詳しくお伝えいたします。

ナラティブとは?

ナラティブ(narrative)とは直訳すると、「物語」や「語り」などを意味する言葉であり、もともと、文芸理論上の用語として登場した言葉とされています。

現代においては、心理や医療、教育、ビジネスなど、文学上での理論を越えさまざまな領域で使われる言葉となりました。

ナラティブアプローチとは

このナラティブを利用し、1990年代に臨床心理学の領域から生まれた支援方法に「ナラティブアプローチ」があります。カウンセリング時に、語り手である相談者自身が話す物語のナラティブを通して悩みの解決法を探す対話を重視したアプローチ方法です。

ナラティブアプローチを実施する際はまず、相談する患者に寄り添い、患者自身のネガティブな思い込みの物語である「ドミナント・ストーリー」を聴きます。ここでのドミナント・ストーリーは「私は上司に嫌われている」とします。

そして、その問題を外在化し患者がその問題を客観視できるようにします。

次に抱えている問題や悩みの根本や具体的な原因を患者自らが考えられるよう
「それはどんな出来事があったのか」「なぜそう思うのか」「普段から嫌われていると感じるのか」など反省的な質問をします。

質問を重ねるなかで、ドミナント・ストーリーとは例外的な部分を見つけていきます。

例を用いると「上司に叱られることは多いが、成功したらしっかり評価してくれていた。嫌われているのではなく、目をかけてくれているのかもしれない。」などとなります。

このナラティブアプローチは心理療法の領域だけでなく、会社内における組織の関係性の悪化や対立を解消するためにも有効なコミュニケーションの手段です。

ナラティブアプローチ

  1. ドミナント・ストーリーを聞く
  2. 問題を外在化する
  3. 反省的な質問をする
  4. 例外的な結論をだす
  5. オルタナティブ・ストーリーを構築する

ビジネスシーンで活用するナラティブ

現在、ビジネスシーンでは従来のストーリーではなくナラティブの活用が注目されています。

ナラティブを活用したマーケティング手法はナラティブマーケティングといいます。

このマーケティング方法はストーリーブランディングと混同しがちですが、明確な違いがあります。

ストーリーとナラティブの違い

ナラティブマーケティングについてご説明する前に、まずはここで「ストーリー」と「ナラティブ」の違いをみていきます。

「物語」というと「ストーリー」という言葉を思い浮かべる人も多いでしょう。

では同じ「物語」という意味でも、「ナラティブ」と「ストーリー」の違いとはなんなのでしょうか?

日本ではナラティブもストーリーも「物語」と訳されますが、海外ではこの2つの言葉には明確な違いがあります。

まず、「ストーリー」とは、物語の道筋や筋書、流れのことを指します。登場人物の中に主人公がおり、その主人公が中心となり、スタートからゴールに向かって起承転結が展開されるのが特徴です。

一方「ナラティブ」は語り手である自分自身が主人公となり話が展開されていき、その物語は完結せず、語り手によって変化し続けることが特徴です。

要するに大きな違いは主人公が登場人物か、語り手である自分自身かという点。そして、完結するか否かという所にあります。

ビジネスにおけるストーリーとナラティブの違い

企業のブランディングが重要視されるようになってから、ストーリーを用いたマーケティングやブランディングは注目されてきました。

ストーリーとナラティブの概念としての違いはご説明しましたが、ビジネスで用いられるこの2つの「物語」を主軸としたマーケティング手法は、具体的に何が違うのでしょうか?

ストーリーブランディングとは

ストーリーテリング型のマーケティング手法である、ストーリーブランディングとは、企業が伝えたい商品やサービス、企業自身の歴史や開発秘話、制作過程などのストーリーを発信することで、顧客やステークホルダーからの理解や共感を得て、最終的にはファンになってもらうことを目指すブランディング方法です。

この場合、主人公は企業であり、顧客は聞き手となり、起承転結をもって物語は展開されていきます。

ストーリーブランディングについて詳しい記事はこちら↓
「ストーリーブランディング」は、中小企業の成長の鍵

ナラティブマーケティングとは

対して、ナラティブマーケティングとは、顧客自身が主人公となる物語を、企業側がその物語に参加・体験させていくマーケティング戦略です。顧客それぞれが語るストーリーにアプローチした手法であり、企業と顧客のコミュニケーション方法なのです。

(ビジネスのマーケティング領域における「ナラティブアプローチ」とも呼ばれますが、本記事ではナラティブマーケティングと表示致します。)

その企業や商品、サービスと接した顧客自身が創造する物語にアプローチすることで、今までは企業主体で発信するのみであったコミュニケーションを、顧客一人ひとりを主役にしたコミュニケーションに置き換える事で、共感を増幅させる事ができるのです。

日本では、まだあまりみられないマーケティング方法ですが、世界的に注目されつつあります。

具体的なストーリーブランディングとナラティブマーケティングの比較例文

例えば、家電を売る場合で考えてみましょう。

「格安!高品質、高機能!今なら保証付き!」

これは機能的価値や値段の安さを謳った宣伝です。

一方、同じ商品でもストーリーテリング型のマーケティング(ストーリーブランディング)を用いると下記のようになるでしょう。

「我々は、暮らしが豊かになって欲しいという思いを込めてこの商品をつくりました。この品質をこの価格でお届けするためには、さまざまな開発過程がありましたが、ようやく今の形にたどり着いたのです。」

このように、商品ができるまでの過程や込めた思いなどを企業主体で伝えます。

そして最後に、ナラティブマーケティングの場合は下記のようになります。

「この商品を買ったあなたにはどんな未来の可能性が広がるでしょうか?あなたの生活にこの商品を取り入れることで、こんな風に生活を豊かにするかもしれません」

このように機能的な価値は謳わず、主役は顧客であり、その商品を買った後の未来の物語へアプローチします。

ここで重要なのは、ナラティブはストーリーは全くの別物ではないということです。もちろん違いは理解しておかなければなりませんが、切り離した全くの別物ではなく、ナラティブはあくまでストーリーを伝えるひとつの手段であるといえます。

いままでは、伝えたいストーリーをそのまま発信するだけでしたが、ナラティブという新たな発信方法を用いたマーケティングを行う事で、顧客は自分事としてそのストーリーを捉えてくれるのです。これにより、より深い共感や理解を得られる効果的な手法といえます。

ナラティブが重要視される理由

上記でお伝えしたような、ストーリーを活用したマーケティングは、企業側が伝えたい事をストーリー仕立てに発信し顧客に伝えるという、一方通行のコミュニケーションしかとれませんでした。

しかし、ナラティブマーケティングは企業と顧客、双方向のコミュニケーションをとることができるため、顧客心理を掴みやすく、販売促進につながります。

さらに、現代はSNSなどを通して顧客自身が自身の体験した物語を語りやすく、そして広めやすい時代になっているためUGC(User Generated Contents/ユーザー制作コンテンツ)が作られやすく、ナラティブは時代に即しているといえます。

ナラティブマーケティングのメリット

親近感を覚えやすい

ナラティブマーケティングの主役は企業ではなく、その商品、サービスを使用する顧客自身です。「自身の生活にその商品、サービスを取り入れたとき、どのような物語が生まれるのか」という部分にスポットライトを当てることで、顧客ごとに物語を思い浮かべます。

そして自分が選んだその未来(選択肢)に愛着が湧き、価値が生まれ、その商品やサービス、企業へ深い思い入れを抱いてくれるようになります。

そのため、顧客は商品やサービス、その企業への親近感を覚えやすく、好感度も上がり、結果として、リピート率も高くなるのです。

本質が伝わりやすい

「高品質」や「高機能」などといった、機能的価値をただ訴えるマーケティング方法は一般的ですが、それでは顧客にとって深い共感や思い入れは抱かれません。

ただ品質を訴えるのではなく、その「高品質高機能」が買ってくれた顧客にもたらす未来を語る方が、商品の本質をさらに共感と理解をしてもらいやすくなり、その商品、サービスの本質の良さが届きやすくなります。

顧客に寄り添った商品開発と市場の位置づけの明確化

ナラティブマーケティングは顧客と企業の商品、サービスが出会うとどのようなストーリーが紡がれるのかという部分「どんな人がこの商品、サービスを使うのか」「それを通して顧客はどうなるのか」というようなことを、より顧客目線で考え尽くす必要があります。

顧客がその企業や商品、サービスを通してどのようなストーリーを歩むのか、という部分が重要であり、そこがしっかり設定できていないとナラティブマーケティングは難しいのです。

しかし、そこをしっかりと想定した商品開発ができれば、それはより顧客に響く商品となります。また、顧客が歩む物語が十分に見据えられている商品やサービスは、市場での位置取りもイメージしやすくなります。

企業のナラティブマーケティング実施事例

SUBARU

SUBARUは「あなたとクルマの物語(Your story with)」というキャッチコピーで、CMやドラマ配信、小説化なども行い、ナラティブマーケティングを実施しています。 

「あなたとクルマ、どんな物語がありますか?」という顧客自身に考えさせるナレーションからスタートします。この言葉を聞いて思わず自分とクルマの出会いを思い返した人も多いのではないでしょうか。

この中ではSUBARUのクルマの機能や価格、理念や創業秘話などは謳われません。さまざまな年代の家庭と、クルマが歩む成長の様子を描くことで、顧客を惹き込み、自身とその物語を結びつけ共感が生まれます。

実際に、SUBARUのCMは多くの共感を獲得し、ナラティブマーケティングの成功例といえます。

パンテーン

2018年よりパンテーンは「さあ、この髪でいこう。#HairWeGo」というスローガンのもと、ユーザー一人ひとりの個性について考えるきっかけづくりをさまざまなキャンペーンを通して展開してきました。

過去に行ったキャンペーンの中でも反響が多かったのは、「#この髪どうしてダメですか」という企画でした。生まれつき茶色い頭髪の生徒や、天然パーマの生徒に「地毛証明」を提出させたり、プールの塩素で髪が茶色くなってしまった生徒に黒染めをさせたりする学校の校則について疑問を投げかけました。

これは、近年定期的に話題に上がる社会問題と、ヘアケアがうまく結びつけられたキャンペーンでした。

商品を使うユーザーが主人公となり自分事として捉えられたことで、このハッシュタグは実際にTwitterで広く拡散され話題を呼びました。

結果、黒染め指導の廃止を求める署名活動が行われ、東京都教育委員会へ2万人の署名が提出されたそうです。

現在は2020年秋より、元就活生でLGBTQ+の方々の体験談から、自分らしさを表現できる就職活動について考える「#PrideHair」というプロジェクトを行なっています。

まとめ

ナラティブは物語を語る新しい手法として、現代において様々な領域で注目されつつあります。特にビジネスシーンでは、従来のストーリーマーケティングから進化した形としてナラティブマーケティングが台頭してきました。

ナラティブマーケティングは、より自分事化させるストーリーを思い描かせることで、深い思い入れと共感を顧客に抱いてもらうことができます。

モノや情報があふれ、飛び交う社会で埋もれない為にも、これからの時代にさらに必要になってくる手法といえるでしょう。