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インナーブランディングに本が効く!出版の活用事例
ブランディングの手法というと、何を思い浮かべるでしょうか。テレビCM、広告、ウェブサイト…。意外と知られていないのが、「出版」という手法です。本は、社外の顧客や取引先のイメージを変えたり、社内で価値観を共有し愛着を生み出したりと、インナー・アウター両方のブランディングに使えるツールなのです。20万部を超えるビジネス書のベストセラーを生み出し、現在は企業のブランディング戦略の立案から実践まで支援する弊社執行役員の中山に、本を使ったブランディングの効果や事例について聞きました。
企業や商品の「約束と生き様」を、差別化して伝えるのがブランディング
──今回は本を使ったブランディングの実践についてお聞きしたいと思います。まずはじめに、中山さんは「ブランド」という言葉をどう定義していますか。
私たちの考えるブランドの定義とは、「約束と生き様」です。つまり、自分たちが何を目指し、お客様に何を提供するのか、社会にどう貢献するのかを社内外に高らかに宣言し、約束する。そしてその宣言を実行する、約束を守る姿を見てもらうことで、信頼と会社の価値が生まれ、他者との差別化ができる。それがブランドだと考えています。
関連する言葉として「ブランディング」もありますが、これはブランドを差異化していく活動を指します。ブランディングでは、会社や商品の他との違いを正しく伝えることが重要です。
付け加えると、ブランディングの目的は「売ること」ではありません。マーケティングの目的は商品を売ることで、マーケティングの中にブランディングも含まれることが多いですが、売ることを重視しすぎるとブランディングにはマイナスになることがあります。マーケティングが売るゲームだとすると、ブランディングは伝言ゲーム。伝えることが目的であると分けて考えると良いでしょう。
──ブランディングを行う際、何が重要でしょうか。
現在は「ブランディング新時代」です。まず信用できる誰かが勧めていることが重要です。SNSのフォロワーが多いことで信頼できると感じたり、Amazonの口コミを見て商品を選んだり。信用している誰かが勧めることで、信頼性が高まり、その会社や商品・サービスが良いものだと浸透していきます。
次にパーパス。これは存在意義や社会的価値を意味し、最近よく使われる言葉です。環境に悪影響を与えない商品や社会貢献になる物を買ったり、会社がどのように社会に貢献しているかを判断基準に就職活動を行ったりする人が増えています。これからのブランディングは、パーパスを意識したものになるべきです。
実際、パーパスブランディングという言葉もあります。サイモン・シネックさんの「ゴールデンサークル理論」も有名ですね。
なぜ企業活動をしているのか、なぜ商品を販売しているのか、なぜ働いているのか。人はWHYに突き動かされるのです。単にWHATやHOWの部分、何ができるかの機能や利便性を伝えるだけのブランディングでは、これからの時代には適合しないでしょう。商品を作った理由や会社を立ち上げた思いを伝えるブランディングが求められます。
そして、ブランディングは、アウターブランディングとインナーブランディングの両輪だと考えています。顧客や取引先、投資家、一般消費者などを対象としたアウターブランディングだけを行っても、あまり意味がないのです。
例えば、会社のブランドがあっても、お客様はその会社からものを買っていると思っていない人が多いですよね。営業マンと商談して商品を買う場合には営業マンが頼りになるかどうかが大事ですし、レストランで食事をするときは店員の態度が良いかどうかを見ています。店員の態度が悪かったら、その店の印象は決まってしまいませんか?もう二度とそのレストランには行かないですよね。
実は、お客様に会社を印象付けているのは会社ではないのです。中で働く社員の方が、会社の代表として印象付けを行なっているのです。最終的なタッチポイントが社員なので、社員との目線を合わせて社会貢献に向き合って働くことが重要だと考えます。そのため、アウターブランディングだけでなく、社員に向けたインナーブランディングも重要であり、社内から徐々に浸透させて外に発信していく活動が求められます。
あまり知られていない出版という手法
──ありがとうございます。そうしたブランディングには、どんな手法が有効ですか。
私たちが推奨している手法は、書籍の出版です。インナーブランディングでは理念の浸透や経営方針の周知、人材教育、社員の定着や離職防止に活用できると考えています。さらにアウターブランディングでは、信頼やファンの獲得、採用力の向上、UGC(ユーザー生成コンテンツ)の拡散が期待できます。
例として、『ほとんどの社員が17時に帰る10年連続右肩上がりの会社』という本を紹介します。著者は化粧品メーカーの代表の方です。独立前はブラック企業の取締役として活躍していたのですが、一念発起して新しく残業なしでも売上が上がる仕組みがある会社づくりに着手。働きやすい環境を整え、売上も右肩上がりになりました。そのストーリーを出版させていただいたのですが、著者の方はうまく社内外の情報発信ツールとして活用していました。
内容は代表の思いや経営哲学が盛り込まれていて、新しい働き方の提言や福利厚生などが紹介されています。このように書籍という形で可視化することで、採用ではミスマッチが起こりにくくなるため、離職防止にも効果があったり、エンゲージメントが高まり組織力が高まる効果もあると考えられます。
本もベストセラーになり、テレビやyahoo!ニュースにも取り上げられるなど情報が拡散されました。いつの時代でも、本を書いている人は「先生」と呼ばれるなど権威性が高まり、他者からの信頼を得やすくなります。加えてチラシやWeb広告と違い一般的な本は200ページ程度あり、創業の背景だったり、代表の想い、創業時や商品開発の苦労話などを余すことなく伝えられます。さらにその内容にパーパスを盛り込むことで、会社のファンになって商品やサービスを買い続けてもらえる効果も期待できます。このように、出版はインナー・アウター両方のブランディングに使える非常に便利な手法です。
──さまざまな手法がある今、書籍が特に有効だと考えるのはなぜですか?
書籍は最古のメディアであり、キリスト教の布教にも聖書が重要でした。今の社会においても、理念や商品、サービスへの想いなどを伝えるために、書籍が役立つと考えています。
さらに分析すると、インターネットやSNSにより、マス広告には厳しい時代になっています。目に入っても深くは伝わらないので、マス広告を使ったブランディング活動が難しくなっているのです。
一方で、SNSはパーソナルメディアであり、Webサイトも含め誰でも発信できるのが良いところですが、信頼性や権威性を得にくいという側面があります。
だからこそ、信頼性が高く、深い情報を発信することができる書籍出版の需要が増えてきているのです。
また、昨今においてはデジタル広告が主流になっていることで、リターゲティングにより個人が追跡されることで、多すぎる情報に疲弊している人が多いことも関係するでしょう。そんな中で、アナログで信頼できる情報源である書籍への回帰が見られるのではないでしょうか。
多種多様な業界のブランディングに“本”の選択肢を
──最古のメディアが復権してきているのですね。具体的に、書籍を使ったブランディングの事例を教えてください。
まずメディアで取り上げられたものを紹介いたします。以前、ビジネス系番組で、USJの立て直しなどで有名なマーケティング会社のCEO森岡毅さんの、書籍を使ったアウターブランディングの事例が紹介されていました。森岡さんが農林中金バリューインベストメンツ一般向けのファンドを立ち上げた際、マーケティングを担当したのです。ファンドの名称をわかりやすく変更し、学生向けの投資講座を開くなど投資に馴染みのない人にも興味を持ってもらえる施策を行いました。そして最終的に、本を出版してファンドへの信頼を定着させたのです。本が個人や会社の信頼・権威性を高め、ブランディングになることがわかる事例です。
インナーブランディングですと、ある情報番組でドン・キホーテさんの秘伝書が紹介されていました。その秘伝書は創業会長が書いた本で、ドン・キホーテで働くにあたって必要な全てが書かれているそうです。接客面やあの面白い売り場づくりに役立っていたり、力を入れているプライベートブランドの商品開発にも活かされているといいます。
当社から出版した本も紹介すると、岐阜県にある創業約150年の酒蔵が出版した『日本酒がワインを超える日~The Entertainment Sake~』という本があります。30年間右肩下がりの酒造業界の中で、なぜ年商約400%もの成長を実現できたのか!?というテーマの切り口でオンリーワンな経営手法をストーリーで語る経営書を出版しました。
──実際に活用されているさまざまな事例があるのですね。
そうですね。弊社でもさまざまな本を作らせていただいています。企業が本をつくる場合、費用をかければ出版できるものの、企業の言いたいことだけを言うだけでは読者不在になってしまいます。私たちはしっかり読者へ価値提供できる本を制作することを大切にしています。
上記の本は、多くの人に手に取ってもらうことができました。世の中に必要とされているサービスや商品を展開している企業が著者となっているので、読者にとっても参考になり、新しい気づきから課題解決につなげることができるのです。このような形でコンサルティング会社、DXの会社、クリニックなど、多種多様な業種に対して出版を提供できると考えています。
本をインナー・アウターブランディングの手法の一つとして見ると、さまざまな発見があると思います。書店を訪れた際に、ブランディングの一環として活用できる本を探してみると面白いかもしれません。
私たちは、物語を紡ぎながら1冊の本にまとめ、書店や読者、著者と読者の間で運命の出会いや可能性を広げていきたいと考えております。何かご質問やお問い合わせがありましたら、お気軽にご連絡ください。